Malcolm Gladwell 氏は、自身の 2000 年のベストセラー本で、転換点を「臨界質量の瞬間、閾値、沸点」と定義しています。
その定義によると、金属 3D プリント (DMP) は転換点を迎えています。DMP は防衛と航空宇宙においてミッションクリティカルなリスク回避型アプリケーションのプロトタイピングから生産へと急速に移行しているためです。
このように、主流として受け入れられている例に、航空宇宙コンポーネントへの DMP 活用に向けた 3D Systems と Thales Alenia Space 社間の長期にわたるパートナーシップが挙げられます。
フランスのトゥールーズを拠点とする Thales Alenia Space 社は、2014 年に 20 億ユーロ超の収益を上げた世界有数の航空宇宙サプライヤーの 1 つです。同社は 8 か国に 7,500 名の従業員を擁し、宇宙通信、ナビゲーション、地球観測、探査、軌道インフラストラクチャ―を専門に扱っています。
3D Systems と Thales Alenia Space 社のコラボレーションの例として、静止通信衛星用のアンテナブラケット (190 x 230 x 290mm) の生産があります。Thales Alenia Space 社の航空宇宙向けチタン用途に、ダイレクト メタル プリントが認可を受け、全面的に利用可能になりました。現在、衛星などの特定の製品の金属部品のうち、80% が 3D プリントによって製造されており、従来の製法による部品に取って代わっています。
迅速かつ効率的な専門知識
Thales Alenia Space 社は、ベルギーにある 3D Systems のオンデマンドマニュファクチャリングチームと協力して、LaserForm Ti Gr5 (A) 製ブラケットの設計とプリントを行い、すべての品質面と公差が満たされていることを保証しています。
3D 設計から製造までを手掛けるサービスである 3D Systems のオンデマンドマニュファクチャリングは、独自のカスタム設計部品を提供する世界有数のプロバイダーです。検証済みのフライト部品の提供を実現するため、即時のオンライン見積り、3D 設計とプリントに関する専門知識、実績豊富な加工後サポートを提供しています。
Thales Alenia Space 社と 3D Systems は協力して、製造可能なアプローチの設計に従いつつ、3D プリント プロセスにトポロジー最適化を適用しました。トポロジー最適化によって、部品の性能仕様を厳格に満たす、最も効率的な材料レイアウトが決定されます。トポロジー最適化では、利用可能なスペース、処理が必要な負荷、境界条件、その他の重要な工学的要因を考慮します。
衛星用の 4 つのブラケットはそれぞれ、アンテナのリフレクターエッジに取り付けられ、成形面にネジ止めされるため、個別の設計が必要でした。
その価値の証明
アンテナ ブラケットは、 3D Systems が ProX DMP 320 機を使用して作成しました。ProX DMP 320 は、頑丈な金属部品の生産向けに設計されています。本機ではまったく新しいアーキテクチャを採用しており、セットアップが簡素化されただけでなく、チタン (グレード 1、5、23)、ニッケル超合金、ステンレス 316L のすべてのタイプの部品形状を汎用的に作成できます。
製造モジュールが交換可能であるため、用途の多様性が高まり、異なる部品材料に切り替える際のダウンタイムが短縮されています。真空の造形チャンバーは制御可能なため、すべての部品を実証済みの材料特性、密度、化学的純度で確実にプリントできます。
ProX DMP 320 は酸素 (O2) レベルが極めて低いため、粉体品質の保全性に優れ、プリント中の部品の微小酸化をゼロに抑え、プリント中の酸化物格子間原子を削減し、チタンなどの酸素 (O2) 感受性合金の機械的特性を改善するなど、重要な利点を享受できます。
優れたパーツを従来半分の時間で
3D Systems の専門知識と ProX DMP 320 の先進的な機能の組み合わせにより、まさに Thales Alenia Space 社が必要とする部品が、従来の製造に要した約半分の時間で作成されました。
DMP で作成したチタン製ブラケットは、従来の製法によるブラケットよりも 25% 軽く、剛性重量比に優れています。
製造コストが大幅に削減されたとともに、従来の製法では 10 週間かかっていた注文から出荷まで (ファイル準備、3D プリント、熱処理、仕上げ、CNC フライス加工、品質管理分析、クリーニング、データトレーサビリティを含む) の合計時間が 4~5 週間に短縮されました。
DMP 導入の加速
衛星アンテナ固定ブラケットは、3D Systems と Thales Alenia Space 社間の DMP コラボレーションの始まりに過ぎません。2015 年、3D Systems は、Thales Alenia Space 社製の 3 基の静止衛星通信用に 50 種類以上の様々な宇宙コンポーネントを生産しました。アンテナのアディティブ マニュファクチャリングの専門家 Florent Lebrun 氏によると、2016 年、Thales Alenia 社は 3D Systems の DMP を使用して生産の倍増を見込んでいます。
3D Systems と Thales Alenia Space 社間のコラボレーションは、世界中の防衛および航空宇宙組織による DMP 採用の加速を象徴しています。DMP が補完する従来の金属製造プロセスと並んで DMP が主流になるのは、まさに時間の問題といえます。