Rapid Application Group 社のプラットフォーム上の Figure 4 パーツ
Figure 4 TOUGH-GRY 15材料は、従来の射出成形に匹敵するほどの卓越した表面品質を実現します。

Terry Hill 氏は、米軍の退役軍人であり、起業家です。アディティブマニュファクチャリングの価値を確信した Hill 氏は、その可能性を証明するために陸軍除隊後に就いた仕事を退職しました。2017 年、Hill 氏はホームオフィスで Rapid Application Group, LLC を設立します。開業以来同社は飛躍的に成長し、2 年目には 300% の成長を遂げてオクラホマ州で最も成長率の高い企業のひとつとなりました。

Rapid Application Group は、石油、ガス、モータースポーツ、ヘルスケア、航空宇宙、防衛分野の顧客に対してミッションクリティカルで時間的制約のある案件に対応し、フル生産を行う積層造形サービス事業を運営しています。オクラホマ州ブロークンアローを拠点とするこのサービス事業は積層造形の分野で 25 年以上の経験があり、粉末焼結積層造形法 (SLS)、熱溶解積層法 (FDM)、マルチジェットプリント (MJP)、ダイレクト金属プリンティング (DMP) の専門家であるとともに、3D Systems On Demand を通じて積層造形技術全般へのアクセスを提供しています。Rapid Application Group の設立以前、Hill 氏にはエンジニア兼パイロットとして米国陸軍で 13 年間の勤務経験があり、Rapid Application Group は、障害を持つ退役軍人が経営する中小企業として認定されています。

ビジネスを驚異的に成長させた Hill 氏は、コスト効率よく生産能力を高める方法を模索し始めました。Hill 氏は、3D Systems の Figure 4® テクノロジの購入がビジネスの成功を決定づける決断になったと言及しています。操作が簡単で、迅速かつ信頼性の高い出力を低コストで実現できる Figure 4 Standalone は、わずか数か月で投資を回収し、Rapid Application Group が高品質な小型部品を生産する能力を倍増させました。

Rapid Application Group の Figure 4 プリントへの送信
Rapid Application Group の Terry Hill 氏は、Figure 4 Standalone と 3D Sprint の使いやすさは「10 点満点中 10 点」であると報告しています。

Figure 4 Standalone は導入後から数か月以内に ROI 向上を実現

Rapid Application Group が Figure 4 Standalone を購入した背景には、部品の品質を維持しながらコスト効率よく生産量を増やしたいという動機がありました。どの機械を導入するかを決定するにあたり、Hill 氏は市場投入までの時間、再現性、部品の表面仕上げ、システムコストなどの検討を行いました。Rapid + TCT の展示会で Figure 4 を見た Hill 氏は、迷うことなく決断を下します。Hill 氏によると、コンパクトながらパワフルで、かつ可動式であることにまず良い印象を受けたと言います。「別の場所に移動したり、アドオンにしたりできるようなものを求めていたのです」と Hill 氏は述べています。「購入を決断するのは、難しいことではありませんでした。」

開梱から数時間後には、Rapid Application Group でこの機械が稼働を開始します。Figure 4 は、シックスシグマで保証される再現性に必要な公差を達成するように、キャリブレーションを行えます。

「私にとって、Figure 4 が提供する再現性は非常に重要です」と Hill 氏は言います。「ファイルをロードしたら、あとは任せておけます。プリントされる部品は、以前にプリントしたものとまったく同じになります。このことは、当社の品質基準と生産スケジュールを維持する上で非常に重要です。Figure 4 Standalone は高精細な小型部品の生産能力を 2 倍にし、数か月で投資を回収できました。」

3D Sprint で使用する 3D プリンティング用ファイル
Rapid Application Group は、すべての 3D プリンタのファイルを 3D Sprint で準備しています。

高速で使いやすい 3D プリントで高品質な量産部品を製造

新しいプリントを迅速かつ簡単に開始できる能力はアプリケーションや業界を問わず重要ですが、プリントサービス事業を運営する環境では、この能力が収益に直接影響します。部品の受け取りと見積もりから、ファイルの修正、部品のプリントへの送信、品質の確保まで、各段階にかかる時間と複雑さが全体の生産性を左右します。Hill 氏は「当社が使用している技術の中では Figure 4 Standalone が最も使いやすく、圧倒的に高速なものになっています。3D Sprint® と組み合わせることで再現性を格段に高め、社内での対応能力を大幅に向上することができました」と言います。

Figure 4 Standalone を使用することで、Rapid Application Group では高品質の部品をかつてないほど短いリードタイムで生産することに成功しています。プリントが完了したら、サポートを除去して部品を洗浄し、UV 硬化ステーションのサイクルを実行するだけで、最終的な部品が完成します。「朝一番にファイルを受け取ると、お昼までにはプリンタに送られ、30〜45 分以内に部品を手にすることができます」と Hill 氏は説明します。他のシステムでは、同じプロセスを完了するのに 7 時間近くかかるでしょう。

3D Sprint のワークフローはシステム全体で生産の流れを維持します

3D Sprint には、3D プリントのプロセスを最初から最後まで円滑に進めるための様々なツールが用意されています。ファイルの操作、品質管理、ファイルの準備からプリント管理まで、高速で使いやすい 3D Sprint のワークフローにより、Rapid Application Group では顧客への見積書の提出やジョブの機械への送信にかかる時間を短縮できたと Hill 氏は言います。「3D Sprint の様々な機能に加え、サムドライブで物理的にファイルを転送しなくてもプリンタにファイルを送信できる機能があるため、当社の業務速度は大幅に向上しました」と Hill 氏は述べています。

また、アディティブマニュファクチャリングソフトウェアは、ファイル内で潜在的な問題がある領域を特定し、その解決策を提供することで、Rapid Application Group が必要なファイル修復を迅速に行うのに役立っています。「生産の流れを維持するための素晴らしいツールです」と Hill 氏は言います。

アルゴリズムベースの Smart Supports ツールには、配置を最適化しながら材料の使用量を最小限に抑えるサポート構造を生成するオプションがあります。また、Smart Supports を無効にして、手動で構造を割り当てることも可能です。「3D Sprint にはそういった自由度があります。必要なことは 3D Sprint でほぼすべてできます」と Hill 氏は述べています。

3D Sprint ワークフローは使いやすく高速なため、Rapid Application Group では 3D プリンタで使用するすべてのファイルをこのソフトウェアで準備しています。このソフトウェアには、別の 3D Systems のプリンタにすばやく切り替えられるというメリットもあります。「使いやすさは 10 点満点中 10 点です」と Hill 氏は言います。オペレータに操作方法を教えるのも非常に簡単なため、新しいユーザーのトレーニングも円滑に進められています。

Figure 4 ビルドチャンバー内の 3D プリントされた部品
Figure 4 Standalone を使用すると、最終部品のプリント時間を数時間から数分に短縮できます。

Figure 4 TOUGH-GRY 15 材料で射出成形レベルの表面品質を実現

Hill 氏によると、Figure 4 が製造する部品の表面品質は射出成形による部品と比べても遜色がないため、その納品時に製造工程を説明して欲しいという申し出が複数の顧客からあったとのことです。「実際にはプリントによる部品ですが、お客様からは射出成形したように見えると言われたこともあります」と Hill 氏は言います。「Figure 4 Standalone のおかげで、卓越した表面品質と強度特性を実現し、部品納入の早さという点でも優れた成果をあげることができました。3D Systems は、射出成形機を 2 フィート四方の空間に詰め込んだようなものです。」

一例として、Rapid Application Group がある医療機器メーカーと協力して、日常的な使用で故障を繰り返し、メンテナンス上の問題を引き起こしていた部品の新バージョンを製造したプロジェクトがあります。Rapid Application Group では Figure 4 Standalone と Figure 4® TOUGH-GRY15 材料を使用して新しいコンポーネントを 3D プリントし、一連の評価テストを実施しました。仕様では 7 フィートの高さからの落下に耐えることが求められていましたが、Hill 氏はさらに一歩進んで、作業場の乾燥した壁面に向けて部品を投げつける試験を行っています。「部品は壁面に埋まりましたが、取り出すと完全に無傷な状態でした」と Hill 氏は報告しています。

Figure 4 を使用することで、Rapid Application Group はこの医療機器メーカーに対してこれらの改良部品を提供するための独占供給契約を締結することができました。機器メーカーにとっては、3D プリント部品を組み込んだ機械ではメンテナンスが大幅に削減され、保証期間を延長できるようになるというメリットが得られました。「誰にとっても大成功のプロジェクトでした」と、Hill 氏は述べています。

Figure 4 システムからの 3D プリント部品の取り外し
Figure 4 Standalone は、信頼性と品質に優れた 3D プリント部品を高速で生産します。

フル生産の積層造形サービス事業を立ち上げる

Hill 氏がアディティブマニュファクチャリングに出会ったのは 2015 年、米国航空医学研究所の研究パイロットとして米空軍が使用するフライトヘルメット用の Hill ヘルメットマウントを発明したときでした。この研究所には小型の 3D プリンタが設置されており、これを見た Hill 氏はひらめきを得て、「最初に AM に触れた瞬間に、これは自分が関わるべきことだと分かりました」と述べています。

除隊後、Hill 氏は世界的な航空宇宙企業の事業開発担当ディレクタに抜擢され、アディティブマニュファクチャリング、ロボット溶接、オートメーションの導入の管理に従事します。ここで Hill 氏は、同社が望む将来像を実現するためにはアディティブマニュファクチャリングがその足掛かりになることを見出しましたが、タイミングと資金の関係からアディティブマニュファクチャリンの導入は実現しませんでした。しかし、技術に対する Hill 氏の自信は揺るぐことがなく、その後同社を退職して Rapid Application Group を設立します。

現在、Rapid Application Group は、あらゆる種類のアディティブマニュファクチャリング技術を用いて部品の大量生産および少量生産に対応しています。同社は障害を負った退役軍人が経営する中小企業として認定を受けており、HUBzone、ITAR、NaVOBA の認証も受けています。また、AS9100D / ISO9001に準拠しており、2019 年第 1 四半期には認証が見込まれています。Hill 氏によると、Rapid Application Group の目的は他の製造業者と競争することではなく支援することにあります。「アディティブマニュファクチャリングのおかげで、その能力をすぐに発揮できるのです」と述べています。

3D プリントで退役軍人の生活に変革をもたらす

Hill 氏のビジョンは、顧客のニーズに応えるだけでなく、退役軍人の仲間たちのニーズに応えることにも広がります。除隊後、Hill 氏は市民としての生活に戻る中で困難を経験しました。Hill 氏はビジネスを通じて、自分と同じような退役軍人が生活を立て直すための支援ができると考えます。そこで立ち上げたのが、退役軍人が市場に通用するスキルを身につけることを目的とした認定プログラム、「Veterans to Additive Manufacturing (退役軍人のためのアディティブマニュファクチャリング)」です。

このプログラムは退役軍人を対象とした体系的なカリキュラムになっており、プリンタのロード方法から品質管理まで、AM による部品製造のワークフロー全体にわたる概念と実践的なトピックを網羅しています。Hill 氏は、軍隊時代に「人を助けたい」という気持ちが自分の本質をなしていることに気付き、市民生活に戻ってからも積極的にそのための活動を続けたいと考えていると言います。この教育プログラムは、退役軍人が市場に通用する職業上のスキルを身につけられる設計になっています。身につけたスキルは、それぞれの目標に応じて引き続き Rapid Application Group 内で活かしたり、他の職場で発揮したりできます。また、Hill 氏は地域の高校生や問題を抱えた若者を対象とした認定プログラム、「Fundamentals of Additive Manufacturing Certificate (アディティブマニュファクチャリングの基礎に関する修了認定)」の立ち上げも行いました。「私たちには、次の世代に手を差し伸べ、アディティブマニュファクチャリングを通じたイノベーションの種を蒔き、育成するという企業責任があります」と Hill 氏は述べています。

Hill 氏が積層造形によって手を差し伸べるのは、人類の仲間だけではありません。Hill 氏は他の組織と協力し、彼の介助犬の妹である Honor のために Figure 4 3D プリンタと Figure 4 TOUGH-GRY 15 材料で義足を設計し、製造しました。退役軍人会に配属されていた Honor は、左後足を損傷して歩行困難な状態でした。Figure 4 材料の耐久性と表面仕上げは義足に適しており、Figure 4 システムの高速さのおかげで、Honor の不在を退役軍人たちが寂しく思う期間は長くは続きませんでした。

「Rapid Application Groupが急速に成長している理由のひとつは、他の人を助けたいという気持ちだと思います」と Hill 氏は言います。「物事が変わってくれれば良いのにと願うことはありませんが、物事を変えるために必要なことは何があってもやりとげたいと思っています。」