①企画開発商品の一例 ② Figure 4 で出力したプロトタイプは実物同様に組立てて折り畳むことができる ③Rhinoceros の 3Dmodel と出力したプロトを比較 ④ Figure 4 の設置状況 ⑤ NC 旋盤などの各種加工機類を備えたミニ工場スペース ⑥Figure 4 Standalone はコンパクトなので置く場所を選ばない

美しく高精度なサンプルをいかにスピーディに作るか?

滋賀県栗東市のジャパン・オプティカルは、メガネのフレームからサング ラス、ゴーグル等の企画・デザインと生産管理に特化した企画開発型企 業である。生産拠点を中国に置き、フランスなどヨーロッパからアメリカに 至る世界のブランドを顧客とするなど、ワールドワイドに展開している。同 社の原動力は、世界の市場ニーズに的確かつスピーディに応えられるデザ インセンスと品質管理の確かさ。「当初はデザイン機能もなく製品も低価 格帯のものが中心でしたが、中国企業等との競合が増えるなか、オリジナ ルの企画・デザインに力を注いで高価格帯の市場へ進出。現在では毎年 200 種を超える新製品を開発するようになっています」。そう語るのは、同 社の創業者としていまも最前線で指揮を取る CEO の木村達郎氏である。 「欧米のメガネ市場における新製品は、毎年 1 月ごろ店頭に並びます。そ こで、私たちはその前年の 1 ~ 2 月から新製品開発をスタートさせます。 メイン市場であるフランスのメガネ店はコンパクトなショップが多く、置ける 商品数も限られています。もし納品が遅れれば他社にスペースを奪われか ねません。納期遅れは決して許されないのです」。メガネフレームのデザイ ンなら 1 年あれば十分と思えるかもしれないが、事はそう簡単ではない。 同社でのメガネフレーム開発の流れを、企画開発部の木村亮麻氏に聞い てみた。「まずはお客様と打合せてデザインの方向性を決め、それを元に デザイナーがデザインを仕上げ、illustrator で三面図に起こします。続い て私が Rhinoceros で 3D モデルを作ってこれをお客様に確認いただき、 要望を伺ってブラッシュアップした上で量産に進むのです」。――この一連 の開発工程の流れのなかで、大きなポイントとなるのが「いかにスムーズ& スピーディに顧客の確認を取るか」だ、と木村亮麻氏は言う。実は著名ブ ランドの専門家でも、三面図や 3D モデルからデザインの良否や掛け心地 をジ ャッジ す る の は 容 易 で は なく、そこで 多 くの 時 間 が 空費されがちなのだ 。
「2Dの図面にせよ 3Dモデルにせよ、そのデザイン案は基本的にメガネ 単体で表現されます。ところが、メガネのデザインや使い心地を検討する には、実際に掛けてみてどうか?を実感することが非常に重要です。実際、 お客様も掛けてみて初めて “ こんな見え方をするメガネなのか!” と理解し、 “ ここをこう直そう ” と的確な指示を素早く返すことができるのです」(木 村 CEO)。そのためこの分野の開発者にとって、優れたデザインを生み出 すことと同様に、高精度なデザインサンプル(プロトタイプ)をスピーディ に作ることが重要なミッションとなる。実際、プロトタイプ製作には各社と もさまざまな手法を取り入れているが、ジャパン・オプティカルがいち早く 採用して大きなアドバンテージを獲得したのが、最新 3D プリンター「3D Systems Figure 4」である。

3D Systems Figure 4 (以下 Figure 4)は、3D プリンティングの世界 において初のスケーラブルかつ超高速の 3D プリントを実現した、完全統 合型の 3D プリンティングプラットフォーム。広範囲な材料に対応し、従 来製品に比べ最大 15 倍もの処理速度を備え、ダイレクト3D 製造にも 対応可能な製品である。ジャパン・オプティカルはこの最新ソリューショ ンで最もコンパクトな Standalone を導入・活用。これまで不可能だった、 低コストによる高精度な即日プロトタイピングを実現し、他社の追随を許 さない、理想的なプロトタイプ製作を可能にしたのである。
 

Rhinoceros で 3D 化し Figure 4 で出力

理想のプロトタイプ製作への長い道

「Figure 4 と出会うまで、当社のプロト作りには非常に多くの曲折がありま した。最初の頃など、デザイナーが発泡スチロールをヤスリで削っていたの ですよ」と木村 CEO は苦笑いする。もちろん発泡スチロールを使うのは同 社独自の手法である。折れ易く扱いが難しいが、速く削れることから同社 の大きな武器となったが、このやり方は 4 〜 5 年で行き詰まってしまった。 発泡スチロールは形やサイズを設計通り再現できるものの質感が出せず、よ り質の高いプロトタイプは作れなかったのである。そこでプロトの専門家に 外注するようになったが、時間とコストが膨大に膨らみ、商品点数が増える と対応しきれなくなってしまったのだ。「中国の工場にも作らせてみましたが、

1点作るのに 1 カ月強。しかも作りが雑で、細かい部分等どうしても思うよ うにできません。やり直しの連続で、お客様に見せられるように仕上げるの に 3 カ月もかかってしまいました」(木村 CEO)

8 ~ 12 カ月の開発期間で最初のプロセスに 3 カ月も空費すると、納期は どうしても厳しくなる。それでも当時はそれが一般的だったが、木村 CEO は逆にこれを短縮し、より高精度なプロトタイプを作ろうと考えた。「2015 年頃、思いきって NC 旋盤等の加工機を一式購入し、社内でプラスチック 板を削りプロトを作り始めました。ところがこれも工程が多く、1 つに 1 週 間近くかかってしまう。さらに “ ここが違う ” と修正を入れれば、結局作り 直しでさらに 1 週間……。もっと速く作る方法はないか考えた末、出した答 えが 3D プリンターの併用でした」(木村 CEO)。つまり、3D プリンターで 先に出力し、先に形やサイズ、雰囲気等を確認し、その上で NC 加工機を使っ て精密なプロトタイプを作れば手戻りもないというわけだ。早速、低価格の 他社製 3D プリンターを導入したが、再び問題に直面することになる。

「メガネフレームの素材はプラスチックと金属の 2 種に分けられます。さらにプ ラスチックは削り出しと射出成形の 2 種があり、金属もチタンやステンレス等 さまざまな種類があります。当社はその全てをカバーしており、それが強みと なっています」(木村 CEO)。ところが、導入した他社製 3D プリンターは精 度が低くて金属フレーム特有の細いテンプルを出力できず、結果、同社は金 属フレーム系のプロトタイプ製作をまたしても外注に頼ることになったのであ る。年に 10 ~ 15 デザイン程度を作る会社ならともかく、毎年 200 デザイ ンも作る同社にとっては大問題だった。すぐに CEO を中心にメタル 3D プリ ンターの導入検討が始まり、情報収集を兼ねて木村氏らはある 3D プリンター 展示会へ参加した。――その会場で出会ったのが Figure 4 だった。

ジャパン・オプティカル CEO の木村達郎氏(右)と企画開発部の木村亮麻氏(左)

Figure 4 でプロトタイプ革命を

「社長と 2 人で各社のメタル 3D プリンター製品を見たのですが、どれも 予想以上に高額で……諦めて帰ろうとした時、出口近くでメガネの出力見 本が展示されていることに気付いたんです。それが Figure 4 を置いた 3D Systems のブースでした」。衝撃だった、と木村亮麻氏は言う。樹脂系プ リンターにも関わらず、その出力見本のフレームは細く高精度で表面も美し く、しかも十分な強度を備えていたのだ。「価格もメタルプリンターよりずっ と低く抑えられ、思わず社長と “ これは行けるのでは ?!” と顔を見合わせた ほど。後日すぐ当社のメタルフレームのデータを送って見本を出してもらった のですが、細いフレームが見事に再現され……じゃ買おうか!と即決しました」 (木村亮麻氏)

こうして Figure 4 を導入した同社では、一瀉千里の勢いで「プロトタイプ 出力革命」が進行した。いまやプラスチック系・金属系を問わず、ほぼ全て の新デザインのプロトタイプを Figure 4 で出力しており、作業途中のデザ インチェック等にも使っている。「操作性が良いので導入後すぐ実務へ投入 できました。とにかく高精度で仕上りも美しく、旧プリンターとは天地ほども 違いました。もう旧プリンターは全く使いません」(木村亮麻氏)。たとえば、 以前はフロントとテンプルを分けて出力すると噛合せが悪くて組立てられず、 レンズさえ入れられない精度の低さだった。そのためコの字に開いた状態で 作らざるを得ず、送付途中の破損もあったが、現在はバラバラに出しても、 問題なく組立てられるし実物同様に動かせる。送付時はコンパクトに畳んで 送れるし、もちろんレンズも入れられるようになったという。

「使い始めてまだ 1 年にもなりませんが、すでにお客様には “ 分かりやすい ” “美しい ” と好評で、レスポンス全般がスピーディになりました。仮に修正指 示があってもすぐに直して再送できるし、初期工程全体がスピードアップした 実感がありますね。また、新製品の耐久テスト用に 50 ~ 100 個出力してく れ、というような全く新しい依頼も増えています。そうした新たな可能性の開 拓も含めて、今後はさらに活用を広げていきたいですね!」(木村 CEO)

株式会社 ジャパン・オプティカル http://www.japanoptical.jp/ja/ 代表者/ CEO 木村達郎 所在地/滋賀県栗東市 創業/ 1982 年 設立/ 1986 年 事業内容/サングラス、ゴーグル、フレーム、 特殊サングラスレンズ及び眼鏡ケース類等の製造企画、卸 資本金/ 1,000 万円