課題
テストに持ち堪え、部品の適格性を早期に認定できる複雑な力学的部品を実現する。
ソリューション
3D Systems の Figure 4 Standalone プリンタと PRO-BLK 10 材料により、頑丈かつ微細な部品を短時間で作成する。
結果
- 設計検証に要する時間が 3 週間から同日に短縮された
- 耐久性の高い PRO-BLK 10 材料をシューズに直接縫い付けてテストを実施できる
- Figure 4 プロトタイプとプロダクション部品を継続的に比較することで、最終部品のパフォーマンスをより正確に予測できるようになった
自覚があるかどうかはさておき、ツール・ド・フランスに出場するサイクリストの過半数が、何マイルにもわたるコースで BOA® Fit System を頼りにしています。また、BOA はワークウェア、医療用ブレイスのほか、ゴルフ、スノーボード、トレイルランなどのスポーツに共通で使用されています。特許取得済みの BOA のフィットシステムは、3 つの統合された部品から構成されており、高パフォーマンスの製品に採用することで、作業者やアスリートのギア (シューズ) をダイヤルド・イン (完璧な状態) に保ちます。
あらゆる産業において、BOA Fit System は、BOA とパートナシップを組んで顧客に最高のパフォーマンスを届けたいと願うトップブランドの製品に導入されています。あらゆる力学レベルで設計された BOA のパフォーマンスシステムは、激しいスポーツに持ち堪え、製品に求められるフィット感を実現するため、速く、楽に、正確にフィットする製品を利用者に届けるために開発されました。
機能的 3D プリント材料を検索
BOA Fit System の主なコンポーネントの 1 つはダイヤル式の部品です。このダイヤルは、ギア (シューズ) を足にぴったりフィットさせる際に発生するレース (靴紐) の張力に応じて、3 段階の強度で設計されています。その例として、同社がギアを減速して高トルクを実現した 2001 年発売開始のスノボードブーツ用の強化ダイヤルがあります。BOA のシニアデザインエンジニアである Daniel Hipwood 氏は、このような製品の力学設計に作業時間のすべてを費やしています。
BOA では数年前から 3D プリントを使用してプロトタイプを作成していますが、Hipwood 氏によれば、彼らが求める材料パフォーマンスが用途となかなか一致しなかったと言います。BOA 製品は非常に小さいうえ、力学的特性が最重視されるため、多くの 3D プリント材料はコンセプト検証と美観の確認にしか役に立ちません。
同氏は、BOA がプリントしていた部品は時間が経つにつれて脆くなり、耐久性がないと説明してくれました。「当社は利用できる材料を見つけられず、行き詰まっていました。コンセプトはあるのに、それを実証する間もなく、プリントした部品が 3 日後にはミーティング中に粉々に砕けてしまうのです。当社が必要とする分解能で熱可塑性プラスチックのようなパフォーマンスを発揮する材料を見つけ、当社の寸法で機能する部品を 3D プリントし、その特性を維持するのは非常に困難でした」
BOA のワークフローでは、予測用に試作品を作成するために、今後も射出成形を多少実施する必要がありますが、同社は 3D プリント部品の耐久性と最終射出成形部品のギャップを埋めたいと考えていました。これにより、設計をさらに推進し、時間を短縮しつつ、確信を持ってツーリング プロセスに臨めるからです。調査した結果、BOA は 3D Systems の Figure 4 テクノロジーと材料にたどり着きました。
Figure 4 でより詳細なテストを実施
Figure 4 は、非接触膜を採用した投影ベースのアディティブ マニュファクチャリング テクノロジーにより、精度および驚くべき忠実性を超高速プリント スピードと融合させています。3D Systems が提供する量産グレードの Figure 4 材料と共に Figure 4® Standalone を使用すれば、BOA はプロダクション部品のパフォーマンスについて早期に見解を得ることができます。BOA では、部品の加工まで通常 3 週間を要していましたが、今では Figure 4 を使用して、同日の午後には設計の実現可能性を評価できるようになりました。
BOA は複数の 3D Systems のFigure 4 材料を使用していますが、中でも、Figure 4® PRO-BLK 10 を特に評価しています。BOA がこれまでに試したアディティブ材料とは異なり、この高精度で量産グレードの材料は長期的な環境安定性と熱可塑性プラスチックのような特性を備えています。また、非常に高い有益性が証明されており、特性を維持する能力に加え、BOA が必要とする優れた分解能とパフォーマンスを実現しています。本材料は BOA の目的達成に大いに貢献しており、これを受けて同社は、本格生産に移行する前に必要となるパフォーマンス要件のしきい値を割り出すため、最終生産部品と Figure 4 部品とで継続的な相関テストを実施しています。「実際に 1 対 1 の相関テストを実施したところ、射出成形コンポーネントと同様のパフォーマンスを発揮することが判明しました」と Hipwood 氏は語っています。
製品開発の一環として、BOA は実用的なプロトタイプを設計し、設計プロセスの早期にシューズに取り付け、テスターが試用できるようにしたいと考えています。最終製品に採用されない設計であっても、ダイヤルをシューズに取り付けて繰り返し使用することで、採用できる設計とそうではない設計についてパフォーマンス データを収集するのに役立ちます。このテストを実施するには、成形穴のないダイヤルを生地に直接縫い付ける必要があります。Hipwood 氏は次のように語ります。「縫い付け可能な標準的なプラスチックを見つけられないどころか、ひび割れない UV 硬化材料を見つけることすら困難です。プラスチックに針穴を開けるには、強靭性が課題になります。弾力性がありつつ、他の用途にも持続的に耐え得る十分な硬度が必要です。部品点数の削減もまた重要です。削減することで、硬いプラスチック材料を必要とする重要な他の機能を、縫い付けたコンポーネントが果たすことがあるからです」このような方法で Figure 4 PRO-BLK 10 をプロトタイプの作成に使用できると、BOA は多大なメリットを得られます。時間と費用を節約しつつ、最高のパフォーマンスを目指して設計を繰り返すことができるからです。
フィットシステムに加え、BOA は無期限の保証、「BOA 保証制度」でも有名です。製品品質が最優先である BOA では、機能的プリント部品を入手することで、Hipwood 氏とエンジニアチームが以前より早いサイクルで設計を進め、ツーリング作成後のコンポーネントの再設計の回数を減らすことができました。「誰もが経費の削減と製品の最適化に努めています。そのため、モールドが作成されてから問題が見つかるのを避けるには、できる限り設計プロセスの早い段階でウィークポイントを特定することが不可欠です」
ほかにも、BOA では、プロトタイピング用の耐久性の高いグレーの材料、Figure 4® TOUGH-GRY 15 や、プロトタイピング用のエラストマー材料、Figure 4® ELAST-BLK 10 を使用しています。靴紐用のダイヤル システム内部に使用される小さな機械部品の作成に加え、BOA では美観的なコンセプト実証、最終用途の固定具、ゴムグリップのオーバーモールドをプリントするために Figure 4 Standalone を使用しています。
成功の実績
Hipwood 氏によると、BOA は 3D Systems のテクノロジーへの投資は 2 つの要素に基づいて決定されたといいます。1 つ目は、同社が 3D Systems チームに相談した際に、非常に好印象を得られたことと、3D Systems が提供するサポートと専門知識のレベルの高さです。2 つ目は、3D Systems の実績です。3D Systems は 3D プリント産業の創始者として堅実なポートフォリオを揃えているため、BOA には、3D Systems と協働すれば、長期的な投資に繋がるという確信がありました。「当社が模索したそれ以外の選択肢は、まだ完全にテストが実施されていないアルファ版やベータ版といった感じでした」と同氏は振り返ります。イノベーションに明確に焦点を当て、アディティブ マニュファクチャリングを推進する取り組みが 3D Systems を傑出させたのです。
Figure 4 を導入したことに、BOA は満足しています。「プリンタが検証作業でどれほど活躍しているか、話したくて仕方ない社員がたくさんいますよ」と Hipwood 氏は語ってくれました。