Read time: 0 minutes

ボトルネック工程を発掘して改善することで、製造工程における全体の生産性を高められます。生産管理において重要な課題であり、最適な対処をすることで業務全体のパフォーマンス向上にもつながります。

しかし、ボトルネック工程がわからない場合や、対処の仕方がわからないという場合もあるでしょう。そこで、今回はボトルネック工程の定義、見つけ方や対処法にスポットを当てて解説します。

 

ボトルネック工程とは?

ボトルネック工程とは、ボトルの首の部分は中身の流れが細くなることにたとえて、生産工程の一部で最も効率が低下するところを指す言葉です。一般にシステムのうち一部の能力が限界に達してパフォーマンスが低下したところと定義しています。

製造業では、扱う素材や商品などにより気づきにくいこともあるものの、生産管理をするうえでは早期発見と最適な対処が求められます。

 

ボトルネックが生産に与える影響

なぜ、ボトルネック工程が生産管理において重要なのかというと、この課題を改善することにより全体の生産性向上につながるためです。たとえば、現状では1時間に100個の商品を製造できる場合、ボトルネック工程への対処により200個製造できるようになれば、明らかに生産効率はアップします。

生産性が低い部分に気づかずに現状のまま生産し続けた場合、競合他社との差が開いていくでしょう。また、生産ラインのみに限らず、ほかの要因がボトルネックになるケースもあります。次は、ボトルネックの原因として考えられるものを解説するので、自社の現状に当てはまるものがないかチェックしてみてください。

 

ボトルネックの原因

製造業においてボトルネック工程がある場合、生産に遅れが生じるリスクが高くなります。遅れないまでも、月間の目標を達成できない、生産数に限度があるといったように、事業としての将来性にも影響します。このような事態を避けるには、原因を明確にすることが大切です。

 

人手が不足している

人手不足は、ボトルネック工程をつくりだす一般的な原因です。どんなにシステムや機械がそろっていても、それを扱う人材が少ないと目標を達成するのが難しくなります。

 

業務が属人化している

業務において特定の従業員のみが専門に担当している場合、その従業員がいないとその業務を進められない状態を属人化といいます。一見すると特定の従業員の専門性を活かせる、信頼されているというポジティブな印象でも、その従業員が退社したあとや休んだ場合は、誰もその業務を進められないため、全体の生産性が下がるおそれがあります。

 

アナログ業務によって遅延している

業務においてデジタル化が進んでいないために、情報の共有などが手作業の場合、デジタル化されている状況に比べると時間がかかってしまいます。また、オフィスや工場に関係者がいない場合は、承認や決裁が翌日以降にずれ込むこともあるでしょう。

このようにアナログ業務のままだと、業務そのものが遅れがちになるため、どうしても生産性が低下する原因になります。

 

生産ライン以外のボトルネックは?

ボトルネックになりうる要因は、生産ラインのみではなくほかの部分にもあります。製造業で考えられる生産ライン以外の要因について探っていきましょう。

 

仕入れ自体がボトルネックになっている

まず、1日の生産能力を超える仕入れが原因となるケースが挙げられます。たとえば、1日に3,000個生産するのが上限の場合、5,000個分の仕入れをすれば2,000個分が在庫になります。

在庫になる2,000個分をすぐに生産してさばけない場合、あきらかに仕入れすぎの状態となるでしょう。

 

需要自体がボトルネックになっている

次に、生産する製品の需要が市場に見合うかどうかも重要な部分で、需要が少ないのに過剰に生産している場合は、製品が売れなかったり、食品などの場合は、廃棄処分になったりすることも想定できます。

このようにせっかく製造しても供給過多になっている場合も、工場そのものがボトルネックになる恐れがあります。製造業において、生産ラインはもちろん、そのほかの要因にも含めてボトルネック工程を考えることが大切です。次は、これらを踏まえてボトルネック工程の見つけ方を見ていきます。

 

ボトルネック工程の見つけ方

生産管理において、自社のどこにボトルネック工程があるかを見極めることは重要なポイントになります。生産性をアップするために注目したい部分などの見つけ方を解説します。

 

作業が停滞している工程はどこか

生産ラインのなかで、生産量・生産スピードが低い部分はどこかをチェックしてみてください。ABC→製品完成となる流れがある場合で考えると、Bで製造した製品が溜まっている場合、Cで作業が滞っていることが考えられます。

 

稼働率が高い工程はどこか

また、A11,000個以上対応できるのに対し、B500個が限界なら、Bの製造スピードや対応力が低い状態です。このように工程ごとに生産能力が異なる場合も、ボトルネック工程である可能性が高いです。

 

トラブルがよく発生している工程はどこか

生産ラインのなかで、設備の故障などが生じやすい部分はボトルネック工程になりやすいです。その設備の許容範囲を超えていたり、部品の交換などのメンテナンスが必要だったりと、さまざまな事情や原因が考えられます。

複数か所でトラブルが生じている場合は、各工程の稼働状況を棒グラフにまとめたピッチダイアグラムを活用することで、作業時間の観点からある程度どの工程に問題あるかを判断できます。

 

ボトルネック工程の解消ステップ

ボトルネック工程を解消・改善することで、その工場の生産性を高めることにつながります。しかし、どのような手順で進めればいいかわからない方もいるのではないでしょうか。ここでは、解消するためのステップを紹介します。

 

ステップ1 ボトルネックの特定する

はじめに、どの工程に問題がありそうかを特定します。主なチェック項目として、作業が滞りやすい・作業スピードが遅く製造に時間がかかりすぎている、生産能力が低い、設備の故障などトラブルが多いなどが挙げられます。

現場の従業員だけでは把握しにくいこともあるので、必ず工場に出向き、現場と現物を確認して判断することが重要です。

 

ステップ2 ボトルネック工程を最大限稼働させる

ある程度、疑わしい工程の見極めができたら、その工程をフル稼働させて現状を把握します。このとき生産能力やスピードに目がいきがちですが、生産を止めている要因がなにかを特定することが重要です。

不良品がどれくらいの割合か、材料や部品などがどれだけ溜まっているか、この工程までの段取りまでの時間なども、あわせてチェックしておきましょう。

 

ステップ3 ボトルネック工程にほかの工程を合わせる

ボトルネック工程の解消は、その部分の設備を交換する、メンテナンスするようなイメージの方もいると思いますが、まずはこの工程で生産を止めないことが大事です。そのため、1度ボトルネック工程の生産能力に、ほかの生産能力を合わせて稼働させてみましょう。

前工程では、ボトルネック工程に必要以上の負荷がかからないよう量や品質を保ち、後工程は、速やかに次の生産に着手できるようスケジューリングするのがコツです。全体の生産がスムーズになることで、1日の生産量の安定や在庫が過剰になることを防ぐことにつながります。

 

ステップ4 ボトルネック工程の能力を強化する

ボトルネック工程に見合う生産性の確保と把握ができたら、今よりも生産性を高めることを検討します。たとえば、その部分の設備を新しくする、数を増やすなどの設備投資や、従業員を増やすといったことが挙げられます。

従業員を増やす場合に検討したいのが、1人の従業員に対し複数の作業ができるよう、スキルアップを図ることです。従業員が自分の担当業務の前後の業務も補えれば、一部の工程でトラブルが発生したときや、人員が足りないときにもカバーできます。

自社に最適な設備投資と、従業員の確保・スキルアップなどを含めて検討することで、ボトルネック工程の解消と生産性をあげることにつながります。

 

ステップ5 14を繰り返し改善を試みる

ボトルネックの解消は、なんども繰り返して検証することが必要です。これまで紹介してきた手順を繰り返し検証し、自社の生産性が向上することを確認していきましょう。複数回にわたり改善を試みることで、より具体的な対策が見つかることもあります。

また、ほかの従業員に対しても、業務の効率化・生産性の向上に力を入れていることをアピールできるでしょう。

 

非ボトルネック工程にも余裕を持った処理能力が必要

ここまでボトルネック工程の解消についてお伝えしてきましたが、現実的に考えると非ボトルネック工程にも余裕ある処理能力が必要です。とくに、機械のみではなく人が関わる作業が含まれている場合は、統計的変動と依存的事象の関係から、予想外の遅延が発生する可能性があるからです。

たとえば、2つの工程で製造する商品がある場合、1時間にそれぞれ平均30個の処理ができるとします。前工程と後工程の処理が適切に行われた場合、合計2時間で30個の製造が可能です。

しかし、前後で処理量にばらつきがある場合、正常稼働時なら平均30個というニュアンスになり、実際は25個だったり28個だったりと統計的変動が発生する可能性があります。

そのほか、後工程の処理量が最大30個でも、前工程で28個だとすれば、後工程では最大28個が限界になります。この時点で平均から2個の遅れが発生するわけです。

この2個分の遅れを取り戻すために、次のターンで前工程を32個に設定したとしても、後工程が最大30個の処理能力だとすれば、30個までしか製造できないことになります。2回の合計で60個の製造を想定していた場合、58個しか製造できない計算です。

毎回、1回の製造に対して30個の製造を予定していた場合、2つの工程のバランスが取れず、製造するたびに過不足が発生すれば、最悪の場合、納期に間に合わない可能性も出てきます。

工程のばらつきと依存の影響により、結果的に新たなボトルネック探しが必要になるばかりでなく、事業としても安定性に欠ける状況になりかねません。

こうしたことから、ボトルネック工程のみではなく非ボトルネック工程にも、若干の余裕が必要であり、処理能力にも柔軟に対応できるだけの余力が必要だといえます。

 

ボトルネック解消の具体例

実際にボトルネック工程を解消する際は、具体例を参考にすることがおすすめです。とある板金加工会社を参考に、モデルケースを紹介します。

この会社では営業が受注した案件を持ち帰り、設計・生産管理による工程決定・材料手配・現場用プログラム作成・専用機械による抜き工程・バリ取り・抜き・曲げ・溶接・塗装といった手順で製造を行っています。

各工程のなかで業務が滞るのが溶接であり、ほかの工程で時間がかかることを考慮しても、なかなか思うように進んでいませんでした。主な原因として、作業者のスキルの差がありミスをカバーするための時間と手間が増えていたこと、作業者のスキル統一に向けた教育に時間が取られて作業が止まる、生産技術チームが正式なチェックをしないで現場に指示を出していたことがボトルネック工程として挙げられます。

これらのボトルネック工程の解消のため、生産技術での作業を21組で確認チェックをしてから現場に指示を出すよう対策したところ、目に見えてミスが減り、スキルの差に関係なく一律の作業ができるようになりました。

また、作業者からの溶接工程に対するクレームや、不良品を補うための材料の再仕入れなどの減少も認められています。現実的には、生産技術での工数や人員が増えてしまいましたが、そのリスク以上に業務全体の工数の減少と、クオリティを統一できるといった成果を得ています。

このケースは板金塗装会社ですが、ほかの業種でも内勤と現場の間でのコミュニケーションや、各種確認作業をしっかり行うことで、ボトルネック工程を解消できる可能性が高くなります。

 

ボトルネック工程は完全にゼロにはできない

ボトルネック工程を解消し、業務の効率化やクオリティの向上などを実感できたとしても、現実としてボトルネック工程がなくなるわけではありません。1つの課題をクリアできても、次に生産性の低い部分がボトルネック工程になり得るからです。

すべての工程で処理能力のバランスが取れていて、余裕があるケースは稀なため、どうしてもボトルネック工程を完全にゼロにすることは難しい点は、覚えておかなければなりません。

 

生産性向上に役立つ5つの手法

製造業において生産性を高めるにはいくつかの手法があります。取り扱う商品や素材により自社に実践できるものは異なりますが、自社で実践可能なものから取り入れることがおすすめです。

 

5S活動の実施

5S活動とは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つのSからはじまる職場環境の整備のことです。整理は不用品の処分、整頓は業務で使うことを想定した配置ルール、清掃は使用する機材の点検を含む清掃、清潔は清掃されたきれいな状態をキープすること、しつけはこれまでのルールを習慣化する意味があります。

これらを実践することで業務における無駄をなくし、従業員にとって働きやすい環境の整備が可能となり、モチベーションややりがいも向上できるでしょう。

 

動作の改善

必要な作業を検討し、不要な作業を省くことを動作の改善といいます。動線を考えることにもつながり、無駄な作業を省くことでスムーズな作業展開と余分なコスト削減が期待できます。具体的には、従業員によりクオリティに差がある部分や、作業に時間を要する部分などが該当し、対策することで生産性向上に貢献するでしょう。

 

段取りの改善

業務を行ううえで段取りのよし悪しは作業に大きく影響するため、実際の業務に適した段取りをすることが重要です。段取りを適切に行うことで、手間や時間が余分にかかることなく、コスト削減にも期待できます。

たとえば、24時間機械を稼働させる場合、材料がなくなる前に次の分の材料を準備しておくことで、24時間稼働を実現できます。また、材料により機械を停止させる場合は、機械のメンテナンスと材料準備にかかる人員を増やすことがポイントです。

 

設備の配置を見直す

現場の設備は作業工程に合わせて設置することが多いですが、従業員が動きやすいよう設備の配置を考えることも大切です。実際に従業員から意見や希望を出してもらい、設備のみならず材料の搬入などについても検討するのがおすすめです。

 

ITソリューション

製造業においてITソリューションの導入は、生産性向上につながる対策です。たとえば、人の手で行っていた部分にロボットを導入する、生産管理そのものを工場内で一括管理できるようシステムを導入するなどが挙げられます。

仕入れや在庫の管理、従業員の勤怠管理、各工程での稼働状況の把握なども自動化すれば、少ない人数でも人手不足にならずに製造することが可能です。ただし、自動化を図るためには設備投資も必要なため、ある程度、費用を確保しておかなければなりません。費用がかかる一面があるものの、ITソリューションを活用することで、一定の生産性向上が期待できるでしょう。

 

 

例えば、ボトルネック工程が製品の不良品率を引き上げている場合、品質管理の観点からその工程の品質管理を見直すことで、生産性の向上や品質の改善を図ることができます。では製造業における品質管理とはどんなものでしょうか?こちらで課題や実施する際のポイントと合わせて解説します。

 

まとめ

今回は、製造業におけるボトルネック工程について、概要や見つけ方、解消法へのステップを紹介しました。さまざまな商品やサービスの需要がある昨今、製造業における生産性は効率重視の傾向が高まっています。そのなかで、自社の製造ラインを生産性重視の運用をしていくことは、必須事項とも言える部分です。

しかし、実際は自社のボトルネック工程がわからなかったり、解消する方法に迷っていたりと、思うように進められないケースもあります。3D Systemsでは、さまざまな産業やヘルスケアに向けて、生産性向上のための3Dプリンターや、ソフトウエア、材料を提供しています。

製造過程を考慮して3D形状を作成し、統合型のソフトウエアの使用により、金型をはじめ部品などもスピーディーかつ高クオリティな提案が可能です。製造ラインのボトルネック工程の解消に向けた取り組みや、生産性向上のための対策なら3D Systemsにご相談ください。