生産業の競争が激化している中、いかにほかの企業と差別化できるかは管理者の大きな課題ですよね。生産効率の向上もそのひとつですが、コスト面を考えると人員を増やす以外の方法を考える必要があります。
生産効率の向上を目指すなら、工程管理を実施するのがおすすめです。工程管理は生産性の向上だけでなく、品質管理や生産リードタイムの短縮など、生産効率を上げるために必要不可欠なものです。
そこで今回は、工程管理の目的や実施する重要性について詳しく紹介します。
工程管理とは
工程管理とは製品づくりの進行を管理することです。工程の進捗だけでなく、業務の効率化・コスト削減・生産性の向上など、製造工程の納期に関わるすべてが対象になります。
「Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)」を最適化させることを目標とし、プロジェクトとして進められます。このプロジェクトは、ひとつの大きなプロジェクトから細分化された個々のプロジェクトに分けられ、それぞれの担当箇所で作業が進むものです。
たとえば製造業では、ひとつのプロジェクトのために各部門の担当者が集まり、会議します。そこでマスタースケジュール・コスト・品質が決定され、各部門の役割を把握して、部門ごとに細分化されたプロジェクトを持ち帰ります。そして、設計・調達・試作・量産体制の順に進む、これが製造業の工程です。この工程に関わるすべての進捗を管理するのが工程管理となります。
工程管理の主な目的
工程管理の目的は、製品の品質を保ち、数量や製造期間を適切な状態で納品することです。そのためには、以下のことに重点を置いて管理します。
生産性の向上
工程管理はこれまでの作業工程を確認して徹底的に見直すため、不要な工程をなくしたり難しい工程をマニュアル化したりします。マニュアルを作成して新人に落とし込めば、熟練の作業員でなくても、一定の基準をクリアできる製品を製造することも可能です。
よって、不良品が減るため、同じ作業内容で生産数を増やすこともできます。このように、工程管理によって無駄の少ない作業を求められ、生産性の向上を期待できます。
品質管理
工程の見直しや、不要な工程の削除による作業ミスを減らす取り組みも、工程管理の範囲です。この取り組みによって、生産数を増やしても安定した品質を保てます。
単純に生産数を増やそうとすると、品質の低下が懸念されがちです。しかし、工程管理することで、品質を保ったまま生産数を増やすのは可能か、可能なら何が必要かなども明確になるため、品質の低下を防げます。
また、生産性の向上のために作成したマニュアルは、一定の品質を確保するためにも役立つアイテムです。工程を標準化することで、技術による差は生まれません。
生産リードタイムの短縮
工程管理は生産リードタイムを短縮するためでもあります。リードタイムとは製品の発注から納品までにかかる時間のことです。
余分な工程を減らしたり効率を上げる作業手順に見直したりするなど、全体の工程をそれぞれ管理することで、リードタイムを短くできます。リードタイムの短縮を重要視する場合、ときには作業員の増員など臨機応変な対応も必要です。
生産リードタイムを短縮することで、ひとつめの目的で紹介した生産性の向上にもつながり、電気代を減らせるなど経費削減効果もあります。
製造原価の低減
工程管理は製造原価の低減にも効果的です。工程管理することで、不要な工程や効率の上がる作業の進め方が見えてきます。よって、製造にかかる費用を削減できるため、原価が減ります。結果として、これまでよりも安い価格で消費者に提供できます。
製造原価は材料費・製造経費・労務費で構成されています。工程管理によって材料費と労務費が削減可能です。また、工程管理によってリードタイムが短縮されると、間接的に製造経費を削減できます。
工程管理の重要性
工程管理は時代の変化によって生まれた、以下の3つの理由から重要視されています。
競争が激化しているため
まずは競争相手が激化している点が挙げられます。昔は数社でしか製造されていなかったものでも、今では何社も同じような製品を製造していることも珍しくありません。また、現代は国内だけでなく、外国の企業も競合相手になります。
技術力に大差がなければ、より低コストで品質のいい製品を造るスピードも必要です。また、クライアントにとって品質が変わらなければ、納品スピードも依頼する判断基準になります。
このように、他社よりもローコスト・高品質・スピード納期を目指すなら、工程管理の導入は欠かせません。
企業活動がより注目されているため
企業はステークホルダーから常に注目されています。ステークホルダーとは企業と利害関係でつながっている、株主・顧客・取引先などや、金融機関・行政機関・各種団体などです。
現代はより厳しく監視される傾向にあり、作業の配分やコストの最適化など、工程の透明化もステークホルダーに求められています。また、企業活動もオープンにすることが必要です。ステークホルダーに納得してもらえるような、無駄のない工程と企業活動内容にするためには、徹底した工程管理が求められます。
プロジェクトのあり方が変化しているため
時代の進化にともない、プロジェクトのあり方が変化しているもの理由のひとつです。近年、プロジェクトは大型化しており、より複雑化しています。それでいて、働き方改革やリモートワークの普及により、これまでのような作業工程では対応できなくなっているのが現状です。
この状況でも円滑に進めるために、工程管理は重要な役割をします。プロジェクトの細分化や、作業環境に合わせた個々の作業工程の割り振りなどを実行します。
工程管理と生産管理の違い
工程管理と生産管理の違いは、管理ている範囲です。工程管理でも全体を管理していますが、とくに納期を中心に対応しています。一方、生産管理は生産ライン全体の工程が対応範囲です。生産管理の中に工程管理があります。
生産管理の扱う範囲は、製品の製造に関わるすべての生産計画、原材料や部品の調達管理、規定の品質を維持できているかの品質管理、そして工程管理にあたる進捗管理です。
工程管理は生産管理の業務のひとつですが、独立したものではなく、製造全体にも関わります。計画通りに工程が進んでいなければ原因を追求し、内容によっては生産計画や調達計画などに反映させることも必要です。
工程管理では、生産に関わるすべての進捗や工程の流れを把握します。
工程管理を実施するメリット
工程管理を実施することによって、生産全体の進捗が見える、経費削減できる、作業効率を高められるなどのメリットがあります。具体的なメリットは以下の内容です。
納期遅れを防止できる
工程管理によって生産全体の進捗が見えるため、納期遅れを防げます。工程管理では個々の細かいプロジェクトごとに進捗を管理しています。一箇所での遅れが最終的な納期遅れにならないかの判断も簡単です。
よって、納期遅れにつながると判断した時点で、プロジェクトに追加で参加できる人員を配置したり、工程を見直したりするなど対策します。工程管理によって早めに対策できるため、納期遅れは発生しません。どうしても納期が遅れると判断した場合でも、確認できた時点でクライアントに説明できるため、大きなトラブルを回避できます。
納期確認の手間を軽減できる
工程管理は納期確認の手間を減らせるところもメリットです。工程管理はガントチャートによってタスクと日程を確認できます。
生産に関わるすべての工程はガントチャートを見ればわかるため、各プロジェクト担当者に確認しなくても納期を自分で把握できます。
生産効率が向上する
工程管理は生産リードタイムを短縮できるため、生産効率が向上します。製品の発注から納品までの時間を減らすためには、各工程の細かい時間の把握と、必要な人員の確認が必要です。
必要な時間と人員が把握できることで、無駄な工程を省いたり人員を増減させたりしてコストカットできます。結果として、これまでよりローコストで生産数を増やせます。
作業者の意識を高められる
工程管理では、納期通りに作業を完了したなどの作業者の成果も記録されるため、作業者の意識を高められます。
目標を上回る時間で作業が完了した、納期に関わる大きなミスなく作業できたなど、自分で結果を振り返られるツールとしても役立ちます。また、もっと作業効率を上げるにはどうしたらいいのだろう、ミスを減らすにはどんな対策が必要かなど、自らスキルを上げようと意識しやすいところもメリットです。
作業員の意識が高まると、モチベーションアップによって作業効率が上がり、現場の雰囲気もよくなります。
工程管理の手順
工程管理はPDCAサイクルをもとに行われます。PDCAサイクルとは「Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)」のプロセスを繰り返すことです。
1.計画を立てる
まずは実施前に計画を立てます。計画は過去のデータを参考に、今回のプロジェクトに合った計画を立てるよう考慮しましょう。計画はプロジェクト全体の大日程計画から細分化された各工程の小日程計画まであります。
プロジェクト全体を計画する大日程計画は、受注から納品までに必要な資金・人員・設備などの計画内容です。期間は3ヶ月〜1年程度になります。
この大日程計画を中短期的に刻んだものが中日程計画です。期間は1ヶ月〜3ヶ月程度で、毎週・毎月計画を立てることになります。中日程計画は生産する製品や製造数などの計画です。
中日程計画をさらに細かくしたものを小日程計画といいます。小日程計画はポジションごとの具体的な仕事内容や作業の割り振り、工程ごとの完了予定日などの詳細な計画です。
小日程計画は最低でも毎週、内容によっては毎日立てることになります。期間は1週間〜1ヶ月程度で、作業者シフトの作成や品番別の作業内容など、細かく複雑な内容も小日程計画に含まれます。
2.工程管理を実施する
計画にしたがって工程管理を実施します。実施では、計画に忠実に行うことがポイントです。そこで、トラブルが起きないかなど問題点を見つけ出します。計画は過去に発生した不具合なども参考に立てますが、それでも想定外のトラブルが起こるケースも少なくありません。問題点があれば、次の手順で対応します。
3.結果を見直す
工程管理を実施した結果、滞りなく計画通りに進んだか、トラブルは起こらなかったかを確認します。遅れや不具合が生じた結果になった場合は、その結果をもとに、どう改めるべきかの改善案が必要です。改善案を作るには、工程の進捗状況や不具合内容を正確に認識できていなければいけません。
工程管理の手順の中でも、結果の見直しはとくに重要な項目です。
4.改善案を実施する
改善案をもとに、再度工程管理を実施します。改善した部分は計画どおり実施されているか、トラブルは解消されたかを確認しながら実施するのがポイントです。
工程管理はPDCAサイクルを繰り返します。改善案の実施で新たに改善が必要になれば、再度結果を見直して次の改善案を実施しましょう。
この手順からもわかるように、工程管理は最初の計画にこだわりすぎてはいけません。実施状況に合わせた柔軟な対応が重要です。
工程管理の方法
工程管理は以下の3つの方法を用いて行われます。それぞれの方法をメリットとデメリットを含めて紹介します。
紙やホワイトボードを使用する
まずは取り入れやすい紙やホワイトボードを使用した方法です。どちらも簡単に用意でき、すぐに活用できます。
紙やホワイトボードのメリットは、誰にでも簡単に活用でき、自由に書き込めるところです。消して書き換えるだけで簡単に修正できるところも魅力です。確認する側も、特別な動作は必要なく、置いてある場所に行くだけで確認できます。
一方、工程を記入した紙やホワイトボードを各箇所すべてに用意するわけにはいかないため、実績を記入する場合や工程を確認したい場合は、置いてあるところまで行く必要があります。
また、ホワイトボードは記載できる量に限りがあるため、情報量が少ないところもデメリットです。新たな情報を書き加えたい場合は、過去の内容と混同するため消す必要があり、過去の実績を追えないデメリットもあります。
Excelやクラウドを使用する
工程管理はExcelやクラウドで作成できます。Excelやクラウドのメリットは、使い方が簡単で、安価で作成できるところです。また、Excelはカスタマイズできるため、工程内容に合わせて自由に作れます。
簡単で自由度が高い反面、変更がリアルタイムに反映できない、過去のデータを活用しにくいところがデメリットです。
新たな実績ができた場合は、その都度Excelを起動して入力するのは手間がかかるため、このような使い方はされません。よって、新たな実績はプリントアウトしたものに手書きで書き足し、後からまとめて打ち込む場合が多いため、リアルタイムな変更は難しくなります。
また、過去の実績データの収集は、Excel操作に慣れた人でないと困難です。Excelはファイルやシートがデータを加えるたびに増えるため、実績データの整理は加工が必要になります。よって、Excelには整理する作業が欠かせません。
工程管理システムを導入する
工程管理の方法の中でも、もっとも効率的なのが工程管理システムの導入です。システムで工程管理を実施するメリットとして、
- リアルタイムな実績の反映
- データの集計や整理などが自動的に行われ、収集したデータも最大限活かせる
- 入力もバーコード読取など作業を短縮できる
などが挙げられます。
紙やホワイトボードの方法では難しかった、さまざまな箇所からの確認や過去の実績を追うのも、パソコンひとつで可能です。また、Excelやクラウドの方法で難しかった、リアルタイムな変更の反映や過去の実績データの収集も、システムを利用すれば手間もほとんど必要ありません。
しかし、工程管理システムの導入は、費用がかかる点やシステム選定を間違えると使いづらく、かえって管理工程を増やしてしまう可能性があります。システム選定は知識豊富な人物が行いましょう。システムの費用は一般的に、数百万円〜数千万円単位で必要です。
工程管理で使用される表
工程管理では誰が見てもわかりやすいよう、図表が使用されます。中でも代表的なガントチャート・ネットワーク図・累積折れ線グラフを紹介します。
ガントチャート
ガントチャートはスケジュール表や管理表にあたります。工程管理のガントチャートは縦軸にタスクを、横軸に日時をグラフで示し、スケジュール全体はガントチャートを見れば一目瞭然です。
もちろん納期も確認できるため、各プロジェクト関係者に確認する手間も不要です。ガントチャートはExcelテンプレートも用意されているため、手軽に利用できます。
ガントチャートは、
- 情報共有
- イレギュラー対応
- 無駄の把握
などの役割もします。ガントチャートでは個々のプロジェクト工程や日程を確認できるため、各プロジェクトの責任者が集まらなくても、簡単な情報はガントチャートによって共有可能です。
また、一部の工程でトラブルが発生した場合も、工程の順序を入れ替えるなかなども確認できます。さらに、工程に無駄があれば複数の人の目で判断して、妥当性を協議できるなど、便利なツールです。
ネットワーク図
各工程の前後関係などは、ネットワーク図を使用した工程管理表で確認します。ネットワーク図とは、生産工程やプロジェクト作業などの手順をネットワークの形状に表した図のことです。ネットワーク図では、工程の手順や各工程に必要な日数などが確認できます。
ネットワーク図はパート図とも呼ばれており、ガントチャートと同じくよく使用される図表です。タスクの処理順序が図表化されており、工程の前後が一目でわかります。また、部門ごとに分かれている作業がいつまでに揃っていないといけないかなど、全体像もわかりやすいところが特徴です。
ネットワーク図では工程ごとの日数が可視化できるため、生産全体の工期を短縮できます。とくに大きなプロジェクトでは、工程数もあり複雑化するため、いくつもの工程が同時進行します。ネットワーク図によって主軸となる日数がかかる工程を重点的に管理し、それに付随する工程を可視化することで、無駄のないスケジュール作成が可能です。
累積折れ線グラフ
累積折れ線グラフとは、KPI(重要業績評価指標)として設定した作業時間・コスト・不良品の数などの累積を表したグラフです。横軸を時間、縦軸を累積値としているため、KPIの累積変化だけでなくスケジュールも確認できます。
改善点や問題点を見つけたい場合、改善の前後を比較したい場合に活用するのが一般的です。また、累積折れ線グラフを使用すると過去の実績推移が一目でわかるため、これから先を予想しやすくなります。
ここまで工程管理について解説しましたが、生産性向上を図るためにはボトルネック工程についての知識も大切です。こちらでは、ボトルネック工程について、見つけ方や解消のステップと一緒に解説しますので、合わせてご覧ください。
まとめ
工程管理とは製品づくりの各工程の順序や進捗、問題点や改善方法などを管理することです。生産性の向上・品質管理・生産リードタイムの短縮などを目的として行われます。昨今の競争の激化やプロジェクトのあり方の変化により、工程管理は欠かせません。
現在の製造業では、企業の競争が激化しており活動がより注目されているため、工程管理は必要不可欠な作業です。工程管理を実施することで、納期遅れを防止できる、納期確認の手間を軽減できる、生産効率が向上するなどのメリットがあるため、積極的に導入しましょう。
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