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工場のコスト削減は、日本のものづくりにおいて多くの企業で課題となっています。オフィスで発生するコストとは性質や考え方が異なるため、工場独自の目線を持って考える必要があります。

また、近年では地球環境への配慮も重視されていることから、設備やエネルギー消費も含めて検討しなければなりません。しかし、なにから着手すればいいか迷う方もいることでしょう。そこで今回は、工場のコスト削減方法やポイント、具体的なアイデアを紹介します。コスト削減を検討している方は、ぜひ最後まで御覧ください。

工場にかかるコストと削減方法は?

工場の運営にかかるコストは、一般的なオフィスでかかるコストとは性質が異なります。ものづくりをするうえで材料はマスト、生産ラインなどで使用する設備なども含まれます。はじめに、工場でかかる代表的なコストの種類と削減方法について見ていきましょう。

材料費

材料費は、自社の製品クオリティを保つため、ある程度のコストがかかります。しかし、物価の高騰や国内外の情勢の影響を受けて、以前よりも高くなってしまうこともあるものです。その際に、仕入れ先との価格交渉で値引きしてもらえればよいですが、交渉成立しなかった場合は、高いままその材料を使わなければなりません。

材料費を削減するには、既存の仕入れ先との価格交渉のほかに、別の仕入れ先を見つけることも選択肢の1つです。ただし、別の仕入れ先と取り引きするにはある程度の信頼関係の構築が必要になるため、それなりの時間を要する可能性はあります。こうした状況から見ても、材料費はやや削減しづらいコストといえるでしょう。

労務費

労務費は主に、従業員に支払う賃金や手当などを指します。労務費を削減するには従業員数を減らすことが最も手っ取り早いですが、減らしたことで人手不足になる可能性はあります。また、大幅なリストラなどを行えば、従業員に不満をもたらすことにもなるため、慎重に検討したうえで実行しなければなりません。

また、これまで手作業で行っていた業務を自動化するなど、業務の効率化を進めると、削減すべき労務費が見えてきます。できる範囲で自動化を進め、人手不足にならない程度の削減が理想的といえるでしょう。

経費

工場の土地や建物の賃料や、運営における水道光熱費、外注費などは、工場を営むうえで必須の経費です。なかでも水道光熱費は比較的見直しやすい部分です。照明や空調を省エネモデルにする、空調のフィルターをこまめに掃除する、使用する電力会社を変えるなど、少し工夫するだけでも削減効果が期待できます。

また、経費は短いスパンで考えるのではなく、10年後20年後などの長期的な目線で考えることが大切です。どのみち、工場運営には経費がかかり続けるので、それをいかに抑えられるかを意識して考えてみてください。

工場のコスト削減に役立つアイデア

ひと口にコストを削減するといっても、工場の場合は、多岐にわたる項目があります。そこで、すぐに取り組めるものから工場の状況により対応できるものなど、役立つアイデアを紹介します。自社にマッチするものをチェックしてみてください。

電気料金の削減

電気料金は、ほぼすべての工場で削減できる部分です。はじめに電気料金を抑えるアイデアをチェックしていきましょう。

LED照明にする

工場内の照明をLED照明に変えると、年間で蛍光灯の場合、消費電力が約7割、電球の場合約8割も電気代を抑えられます。ただし、一般的な白熱電球と比べて購入費用が10倍程度になるため初期費用はかかります。

初期費用をかけたとしても、5年後10年後と長い目で見た場合、従来の78割程度も電気代を抑えられるのは魅力です。また、それぞれの寿命で見ていくと、白熱電球は1,0002,000時間、LED照明は40,000時間程度と差があり、交換する手間も大幅に省けます。

インバーター方式にする

照明をインバーター方式にすることで、必要最小限の電力を供給できるようになります。インバーター方式は、交流電源を直流化して、高周波に変換して光らせる方式です。

電力を光に変換する効率が高いため省エネにも貢献します。また、照度の調整が可能で、光のちらつきがないことから、目にも優しいことも魅力でしょう。

ただし、導入する際は設備を整える必要があるため、使用環境における条件などは確認が必要です。とはいえ、インバーター対応のLED照明にすれば、より一層の節電効果が期待できます。

照明を間引く・照度の見直しをする

現場の照明の数を減らしたり、照度を下げたり調整をすることでも電気代を抑えることにつながります。場合によっては、照明を間引くことも有効な手段です。余分な費用がかからないのも魅力といえます。

しかし、現場の作業に差し支えない程度での実践が望ましいため、大幅な削減にはつながりにくい傾向があります。それでも、ほかの方法と組み合わせて実践すれば目に見える効果が期待できるでしょう。

電気会社を変更する

電力の小売全面自由化により、一般住宅はもちろん工場も契約する電力会社を選べるようになっています。現状の契約内容を確認し、今よりも安い電気会社に変更することも検討しておきたい項目です。

電力会社のなかには、基本料金が無料のところや、ガスやインターネットなどもまとめて契約できるところがあり、まとめることで割引の適用や割引率がアップすることもあります。自社の住所で利用できる電力会社のうち、最も条件のよいところを探して検討してみるとよいでしょう。

自社で発電設備を導入する

太陽光パネルの設置など発電設備を導入するのも節電効果が期待できます。太陽光から得た電力を工場内で使用すれば、その分の電気代がかかりません。ただし、パネルの設置費用やメンテナンス費用がかかるので、事前にどれだけ削減できるか確認することをおすすめします。

初期費用はほかのアイデアよりも高くなりますが、停電などのときにも蓄電した電力を使えるなど、導入するメリットがあります。

水道料金の削減

水をたくさん使う工場の場合、水道料金も抑えたいものです。電気の次は水について、削減する方法を解説します。

自家水道システムを導入する

自家水道システムは、水を上外道から調達するのではなく、施設内で井戸を掘り、地下水を組みあげて利用することをいいます。井戸を掘るための初期費用はかかるものの、長期的に見れば地下水を有効利用できることになります。導入する際は、初期費用をどれくらいの期間で回収できるかのシミュレーションが重要です。

節水弁を活用する

節水弁は、節水ノズルともいい、蛇口部分に便を取り付けて節水するものです。導入すると30%から最大でも70%程度の節水ができるものの、少ない水量で使うことになるため、水圧が必要な場所には向きません。これらを踏まえ、洗面所やトイレの手洗い場などに活用するのもよいでしょう。

通信料金を削減する

インターネットの利用が日常的な昨今、通信費も経費を圧迫する項目となっています。これらを少しでも抑えるには、料金プランはもちろん通信速度などもチェックすることが大切です。

消耗品費を削減する

工場内の情報共有が紙媒体の場合、ボールペンやノートなどの備品もしくは消耗品が多数必要です。これらを削減することもコストダウンにつながります。

ペーパーレス化を促進する

これまで紙媒体でやりとりしていたものを、オンラインで電子化されたデータとしてやりとりすることで、ペーパーレス化を実現できます。たとえば、FAXを受信した際にデータ化してパソコンに保存する、各種資料などもデジタル化してしまえば、紙やインクの消費量を大幅に削減できます。

ただし、電子化するためのシステム導入や、セキュリティ面への配慮が必要となるため、初期費用はかかります。しかし、作業効率の向上や省エネにも貢献するため、検討してみるとよいでしょう。

常に使うものは定期購入にする

業務内容によっては、文房具や備品など日常的に使うものがあります。これらは少しでも安く購入するために、定期購入の利用がおすすめです。

定期購入は一定間隔で購入できるだけでなく、割引や送料無料などの特典を利用できる場合が多いです。大量に一括購入してもこうした特典がありますが、保管場所や劣化のリスクを考えると、定期購入がよいでしょう。

通勤などの移動費を削減する

業務によっては会議をするためだけに出張することもありますが、オンライン会議システムの導入によりこれらの移動費を削減できます。オンライン会議システムは無料もしくは有料でも年間数万円程度と手軽であり、現場から参加できるメリットがあります。

また、通勤に関しても可能ならばテレワークを導入する、社用車をカーシェアリングにするなどで軽減できるでしょう。

オンライン会議へ切り替える

社内もしくは離れた工場間での会議をオンライン会議に切り替えることで、移動費や備品費を削減することにつながります。対面の会議の場合、一人ひとりが1つの場所に集まり、紙媒体の資料と飲み物を配布するといった手間がかかります。

その点、オンライン会議なら離れた場所でも参加可能、資料は画面共有や事前にファイルを共有することで、簡単に配布できることがメリットです。資料作りや飲み物を準備する人件費もわずかながら削減できるでしょう。

人件費を削減する

人件費は事業のなかでもコストとして占める割合が大きい部分です。そのため、できるだけ抑えたいと思っても、必要な人員数を考えるとなかなかバランスが取りにくいこともあるでしょう。業務に支障なく必要最小限の人員を確保するには、現場での体制づくりも重要です。

アウトソーシングを利用する

自社の人件費を抑えるには、業務をアウトソーシングするのが有効な手段です。現場の業務のなかで独立して外注できる工程は、アウトソーシングするほうがコストを抑えられる可能性はあります。

しかし、人件費を抑えることと、人手不足をカバーできるメリットがある一方で、自社の情報やノウハウが外部に流れ出るおそれも否めません。アウトソーシングを活用しつつ、アルバイトや派遣社員で人員を確保するなど、バランスも考えながら利用することをおすすめします。

コスト削減のポイント

コスト削減を実践するには、いくつかポイントを押さえて取り組むことが大切です。やみくもに節約するだけでは、職場環境や従業員にもネガティブな影響を与えるからです。ここでは、コスト削減をする際のポイントを解説します。

コストの分析と優先順位を決める

はじめに、現状で発生しているコストの把握と、分析を行います。何にいくらかかっているかを把握するには、原価計算を行うことが有効です。また、社内全体で把握と分析を行い、経営層はもちろん従業員にも取り組みを浸透させておきましょう。

たとえば、経営層から見た分析と、従業員から見た分析は異なる結果になることがあります。それらをすり合わせていくことで、本当に削減すべき部分が見えてくるでしょう。

また、コスト削減で得られるメリットや優先順位なども各部署で検討することをおすすめします。部署によっては減らされては困るものもあるため、そういった意見も合わせて総合的かつ具体的・現実的な取り組みが必要です。

無駄の解消が作業効率を上げる

次に現場での作業について効率に着目し、作業効率をあげる方法も話し合いましょう。とくに、工場では生産ラインに沿った作業があるため、従業員の意見も取り入れながら無駄を省くことが大切です。

たとえば、材料を倉庫に取りにいき、現場に戻るまで時間がかかる、現場での動線がよくないなどのような、そこの担当者でなければわからないような無駄は、積極的に取り入れることが大切です。場合によっては、従業員の安全を損なう可能性もあるからです。

従業員が働きやすく、無駄や無理が少ない環境を整備することで、一定のコスト削減が期待できるでしょう。

 

 

ここまで工場のコスト削減方法について解説しましたが、生産ラインのタクトタイムの最適化も、生産プロセスの効率性を向上させ、コスト削減が期待できるでしょう。次にこちらでは、そんなタクトタイムについて、サイクルタイムとの違いと合わせて解説します。

 

まとめ

工場で生じるコストはさまざまな種類があり、とくに電力関係は生産ラインで不可欠なので負担が大きくなりがちです。

工場によってはこの先、人手不足に陥ることも考えられるため、現状から可能なかぎりコスト削減と業務効率化を意識して取り組まなければなりません。同時に、利益を拡大していくためにも重要な意味があるといえるでしょう。

工場においてコスト削減や生産性の向上を検討している場合、業務システムや管理システムの導入も有効な手段です。3D SYSTEMSは、3Dプリンタをはじめ製造や管理・検査などに関するソフトウエア、各種素材を提供しています。

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