従来のインベストメント鋳造、すなわちワックスパターンを熱で除去した後でセラミックモールドから金属パーツを製造するという方式には、5,000 年以上の歴史があります。このプロセスは、前の世紀を通じて、さまざまなイノベーションによって改良されてきましたが、現在でも、複雑なパーツに対してこの種のツーリングを作成するには、長い時間と多くのコストがかかります。製造時間は数か月に及ぶのが普通で、コストは数十万ドルに達することもあります。

それでも、70 年の歴史を持つ航空宇宙関連パーツのサプライヤーであり、3D プリンティングに関して 20 年以上の経験を持つ Vaupell の例が示すように、ワークフローは急速に変わりつつあります。

Vaupell は 3D Systems がインベストメント鋳型のために開発した光造形 (SLA) プロセスである QuickCast® を使用して、従来の手法に比べてコストを大幅に下げながら、これまでにない速度と品質で顧客に製品を供給しています。QuickCast プロセスは、少数の非常に複雑なパーツを必要とすることが多い航空宇宙市場に最適です。

Vaupell は 3D プリントによる鋳型パターンで時間と経費を節約

大きいサイズの正確な製造

Vaupell の新事業開発担当セールスエンジニアである Andy Reeves 氏の見積もりによると、特定の直径 26 インチのパーツパターンを、3D Systems ProX® 800 を使用して QuickCast で製造する場合、必要な時間は 2、3 日、費用は 6,000 ~ 15,000 ドル程度です。同じパーツのワックスツールを作成するには、数か月ないし 1 年以上の時間と、200,000 ~ 300,000 ドルの費用がかかると推定されます。

ProX 800 はプリントサイズが 25.6 x 29.5 x 21.65 インチ (650 x 750 x 550 mm) と大きいため、大きいパーツを 1 回で作成することも、複数のパーツを短時間で作成することもでき、柔軟性と速度が向上します。

「大型のプラットフォームは、他のマシンに比べて大きな利点となります」とVaupell のラピッドプロトタイピングマネージャーである Austin Wong 氏は語ります。「小型のマシンなら 2 パスが必要な大きなパーツでも、このマシンなら 1 パスで作成できます。短時間でより多くの数を作成できるだけでなく、大きいパーツを使用すれば、ピース数が減って必要な溶接も少なくなるので、人件費を節約できます」

ProX 800 の精度は、パーツ寸法 1 インチあたり 0.001 ~ 0.002インチ (0.025 ~ 0.05mm) と高いため、Vaupell は、航空宇宙業界のお客様の厳しい要件を充たすことができます。

「ProX 800 によって、高品質の側壁、より良い公差、大規模プリントベッドを実現できます。」と Wong 氏は述べています。「樹脂の仕上げがとても良いので、プリント後の仕上げにかかる時間を短縮できています。また、2 つのピースを接着してパーツを構築する必要がないことも時間の節約に繋がっています。」

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SLA QuickCast インベストメント鋳造パターンを使用することで、Vaupell は高品質の鋳造金属パーツをはるかに少ない時間とコストで提供できます。

市場ニーズへの適合

Reeves 氏によると、QuickCast インベストメント鋳造の市場は、2 つの強力なビジネスニーズから生じています。1 つは他の方法で製造できないパーツを鋳造すること、もう 1 つは、極めて複雑であるために、製造に適したモールドを実現するのに数年かかるようなパーツを鋳造することです。

航空宇宙企業は、3D プリンティングを使うことで、複雑な設計を実現し、アセンブリのパーツ数と重量を削減しながら、強度と耐久性を維持または改善できることに気づき始めました。<br /> 「これらのパーツの多くはジェットタービンに用いられるので、完璧でなければなりません」と Wong 氏は語ります。「これらの輪郭をワックスツールでモールドするには、膨大な費用と長いリードタイムがかかるでしょう」

ワックスで設計、製造するには時間がかかりすぎるモールドから製造に適したパターンを得るニーズによって、ニューハンプシャー州ハドソンにある Vaupell のラピッドプロトタイピングのブリッジツール ビジネスは、大きく展開しています。

「QuickCast パターンを使用することで、お客様は、製造またはプロトタイプツールの設計、作成、テスト、オンライン化よりもずっと前に、パーツを手にすることができます」と Wong 氏は語ります。

Wong 氏が例に挙げたあるプロジェクトの場合、Vaupell は QuickCast を使用して複雑なインベストメント鋳造パターンを作成することで、わずか 2 日半で 20 のパーツを製造した後、1 か月という短期間でパーツ数を 120 まで拡大できました。

「当社が QuickCast を使用してパーツを提供しなければ、お客様は契約を守ることができなかったでしょう。場合によっては、お客様がまだワックスツールの開発と作成に取り組んでいる間に、当社は 1 年間にわたり 2、3 種類の QuickCast パターンを 1 か月あたり 150 個程度製造することもあります」

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3D Systems の QuickCast の造形方法の内部構造はシェルインベストメント鋳造と非常に互換性が高く、高品質で再現性の高い結果を実現する信頼性の高いパフォーマンスを備えています。

アンチモンフリー、バーンアウトの向上

縮みが少なく反復を増やすことが可能

インベストメント鋳造の大きな課題の 1 つである製造時の縮みの計算は、QuickCast を使えば大幅に簡素化されます。

「ワックスツーリングと比べたときの QuickCast の大きな利点の 1 つは、金属の縮みだけを計算すればいいことです」と Wong 氏は語ります。「金属の縮みに加えてワックスの縮みも計算する必要はないのです。QuickCast パターンは、どのワックスツールよりも精度が高く、厳格な公差を維持できます」

Reeves 氏によれば、QuickCast プロセスは試行錯誤に非常に適しています。パターンに誤りがあったり、期待通りに動作しなかったりした場合、新しいイテレーションを作成してプリントするには数日しかかかりません。これに対して、ワックスモールドの修正 (あるいは再作成) には数週間あるいは数か月かかります。

プロトタイピングアプリケーションの場合、イテレーションを可能にする QuickCast の能力は極めて重要なので、従来のインベストメント鋳造企業の多くはプロトタイピングビジネスから完全に撤退しています。

「従来のワックスモールドで設計のプロトタイピングを行うのは経済的に引き合いません」と Reeves 氏は語ります。「一方、QuickCast は反復設計に非常に適しているので、パーツとプロセスの両方の開発をサポートできます」

3D プリンティングの初期にインベストメント鋳造に関して最も懸念されたのは、利用可能な材料の品質と特性でした。その懸念を解消したのが、3D Systems の Accura® CastPro™ Free などの材料でした。

CastPro Free はポリカーボネートに似た透明材料で、重金属は含まれていません。これは極めて精度が高い材料で、安定した高品質のインベストメント鋳造パターンを実現できます。

「CastPro Free はアンチモンフリーであり、金属の最終鋳造の際に閉塞やその他の欠陥が発生しません」と語るのは、Vaupell の高度製造技術マネージャーである Dave Pellegrino 氏です。

CastPro Free は、市販の既存の樹脂よりも燃え残りの灰分が少ないため、後処理の時間を短縮でき、品質も向上します。

「樹脂が完全に燃焼しないと、お客様にとっては問題となります」と Wong 氏は語ります。「CastPro Free はきれいに燃え尽きるので、高い品質を実現できます」

成果を挙げるサポート

ProX 800 3D プリンターと QuickCast プロセスおよび材料の技術的能力に加えて、Vaupell は、3D Systems との 20 年に及ぶパートナーシップを活用して、お客様が期待する品質のサービスを提供しています。

「アディティブマニュファクチャリングで重要なのは、どの会社が最も速く、最も高品質に、最も低コストで製造できるかです」と Wong 氏は語ります。「Vaupell は速度と品質を重視しています。特別に大きいパーツ以外は、1 日から 3 日以内での納品を約束しています。3D Systems からタイムリーなサポートが得られるので、この約束を守ることができます」