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製造業界での技術革新は目まぐるしく、都度多くの工程で体制の見直しが必要です。品質管理も見直しが必要な工程のひとつですが、課題が多くてどこから見直せばいいかわかりにくいですよね。

そこで今回は、品質管理を構成する要素や課題など、品質管理の概要を解説します。実施する際のポイントも詳しく紹介していますので参考にしてください。

 

製造業の品質管理とは

製造業における品質管理とは、製品をつくる工程で一定の品質が保たれているか、不良品などが混ざっていないかを検査し、管理することです。品質管理は「Quality Control」の略でQCともいいます。品質管理は、品質の安定した製品を提供することを目的に実施されます。

製造での品質管理は、製品の点検や交換だけでなく、不良品が発生した際の対応も重要です。品質管理ではなぜ不良品が出てしまったのかなど、発生原因の追求まで行います。ひとつのプロジェクトが完了すればいいだけではなく、次のプロジェクトでも同じトラブルが起きないように、再発防止策をとる目的でも品質管理は必要です。

 

品質管理の重要性

品質管理は品質の低い製品を販売しないために重要なことです。低品質の製品を販売することは消費者からクレームが出るだけでなく、企業の信用を失う恐れもあります。企業のイメージが低下すると、今後製造の依頼が来なくなり、業績の悪化も考えられます。

また、不良品を販売することは、消費者にとってもデメリットです。製品によってはケガをしたり火災の原因になったりと、さまざまな危害を加える恐れがあります。

販売した企業にとっても消費者にとっても不利益を被る、低品質な製品の販売を避けるために、品質管理はとても重要なものです。反対に、品質管理の徹底された製品は企業の信頼性が増して消費者から喜ばれ、より企業の未来が明るくなります。

 

品質管理を構成する要素

品質管理は、工程管理・品質検証・品質改善の3つの要素で構成されています。それぞれの業務について詳しく紹介します。

 

工程管理

工程管理とは受注から納品まで、製品づくりの進行を管理する業務のことです。工程管理では各工程の納期や進捗だけでなく、業務の効率化・コスト削減・品質の向上・作業に関する問題点の改善など、製造工程の納期に関わるすべてが対象になります。

一定の品質を保つためには、製造作業の精度を一定に保つことが重要です。しかし、実際の作業員はそれぞれ技術力にばらつきがあるため、このばらつきを軽減させるには工程管理が必要です。

工程管理では品質を保つためにマニュアルを作成して、新人でも熟練の作業員と同じ精度で作業できる、不良品が発生した場合は、原因を追求して工程を修正し不良品を出さないよう努める、などを実施します。

また、製造に使用する設備の管理も工程管理です。設備はトラブルなく高品質の製品を作るために欠かせません。工程管理では、定期的に設備を点検し、必要があれば修理や交換を行います。

また工程の見直しによって、より効率的でミスのしにくい作業手順にすることで、生産性の向上が期待できます。

 

品質検証

品質検証とは、製品の品質に問題ないかを検証する業務です。製品づくりは原材料や部品の受け入れ・製造・完成・出荷の4段階に分けられます。その各段階で、受け入れ検査・工程内検査・完成品検査・出荷検査を行います。それぞれの箇所に適した品質検証を行い、順にすべてクリアしないと製品として届けられません。

  • 受け入れ検査
    原材料や部品の品質基準に適合しているかどうかを検査する
  • 工程内検査
    生産ラインに乗った製造途中のものをランダムに抜き出し、不良がないかを検査する
  • 完成品検査
    完成品に不良品がないかを検査する
    製品の強度や耐久性を確認する破壊検査と、破壊せずサンプルを検査する非破壊検査の両方を実施する
  • 出荷検査
    出荷前に不良品がないかを最終確認する

品質基準はJIS(日本産業規格)やISO規格(国際規格)を用いています。

 

品質改善

品質改善とはQCストーリーを使用して、不良品を発生させないように改善する業務です。QCストーリーとは 問題解決のための進め方のことで、テーマ・現状把握・目標設定・活動計画・原因解析・対策立案・対策実施・効果確認・歯止め・反省と今後の方針の流れで行います。

また、不良品の発生予防には、工程FMEAを使用します。工程FMEAとは どのような問題につながるかを事前に抽出・整理する手法です。変化点の明確化、変化点に対する心配点の洗い出し、故障モードの決定・影響・発生・検出の分析、改善案の検討・実施の手順で行います。

 

製造業における品質管理の課題

品質管理するには、クリアしなければならない課題が多くあります。品質管理は製造業にとって大きな利益をもたらす方法のため、ひとつずつ課題をクリアしていきましょう。

 

人手不足

ひとつ目の課題は人手不足です。製造業に限らず日本では、少子化による人口減少により、人手不足が深刻になっています。製造業の人手不足はとくに深刻で、2002年度の製造業の若手就業者数は約384万人でしたが、2021年度では約263万人と20年ほどで約120万人も減少しています。

人手不足はとても大きな問題です。従業員が少ないとひとりあたりの業務量が増えて作業効率が下がる、作業効率を上げようとして作業スピードを上げると一定の品質を保つのが難しくなる、と負のスパイラルが発生します。

このような状態で、さらに品質管理を担当する人員を確保するのは非常に難しいため、人手不足の解消は必要不可欠です。

製造業の人手不足解消には、

  • 労働環境の整備
  • 広報活動の活発化
  • 外国人の積極採用
  • ITツールの導入
  • 人材育成の強化

などを対策しましょう。

とくに5つ目の人材育成の強化は重要です。製品の品質を保つには、熟年者から新人へ技術の継承が必要です。継承しなければ、熟年者の退職後は品質低下に悩むことになりかねません。

 

正確性

これまで、品質管理は目視で行われていました。各工程で必要な検査を人の目で行うのはとても大変です。人が行うとどうしてもミスや漏れが発生します。また、検査にばらつきが生まれるため、正確性に欠けます。

人の目でも品質検査の正確性を保つなら、マニュアル作成が必要です。誰が検査しても同じポイントをチェックできるようにすれば、検査内容のばらつきを防げます。また、細かいチェック項目を設けることで、検査漏れを防ぐことも可能です。

また、より正確な品質管理を求めるなら、システムの導入を検討しましょう。人の目に頼らずデジタル技術に頼ることで人的ミスをなくせます。ただし、システムエラーが起きないとも限らないため、最終検査は人による2重チェックがおすすめです。

 

部門間の連携不足

製造業は部門間の連携不足も大きな課題のひとつです。製造はいくつのも部門に分かれており、そこから複数の工程に分かれます。

近年はひとつのプロジェクトが大きくなりつつあるため、ひとつの製品を作るために、非常に多くの部門が関わっています。そのため、部門間で情報を共有したり意識を合わせたりするのが難しく、連携不足によるトラブルも少なくありません。

部門間の連携不足を解消させるためには、まず部門のトップが連携することの効果と意義をしっかり認識することが必要です。部門のトップ間で進む方向が揃えば、積極的に連携できるようになります。

部門同士が同じ方向を向けるようになったら、情報を共有できるシステムを導入しましょう。部門のトップ同士が頻繁に打ち合わせしなくても、持ち場で変更点などをリアルタイムで確認できます。

 

定着率の悪さ

きるものでないと現場には定着しません。品質管理は現場で確認するのが基本です。データ上の内容だけで改善案を提案しても、現場では利用できません。

より現場に合った改善案を提案できて施策を定着させたいなら、現場の状況をしっかり確認しましょう。必要であれば現場の従業員に意見を聞くのも大切です。

 

品質管理を実施する際のポイント

品質管理を実施する際には、6つのポイントを押さえましょう。それぞれのポイントを解説します。

 

5Sを意識する

まずは5Sを意識して現場に定着させましょう。5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」です。

  • 整理
    必要なものと不要なものに分けて、不要なものは処分する
    在庫や道具などの物理的なものだけでなく、データや情報も含まれる
    作業に必要な道具やデータを探す手間が減る

  • 整頓
    必要なものを必要なときにスムーズに利用できるように、場所を決めて配置する
    誰が見てもすぐにわかり元の位置に戻してもらえるよう、表示方法などを工夫する
    必要なものを探す無駄な時間を削減でき、生産性を向上できる

  • 清掃
    使用するものや場所を常にきれいな状態にする
    単なる掃除ではなく、目標を決めて行う
    目標を達成するにはルール作りが必要

  • 清潔
    清掃によりきれいにしたものや場所を維持する
    見た目のきれいさや作業効率が上がるだけでなく、安全性の向上にもつながる

  • しつけ
    整理・整頓・清掃・清潔の4つを続けるために、現場に定着させる
    継続させるには現場でのルールを設けるなどの対策が必要

おもに工程管理で用いられる手法です。5Sの目的は徹底的に無駄をなくして、作業を効率化させることです。また、作業員のモラル向上や仕事に対する意識を高められるなど、メリットが多くあります。

5Sを定着させることで、品質管理における人的ミスを軽減できます。

 

4Mを管理する

4Mとは「人」「機械」「方法」「材料や製品」の4つのことで、製品の製造において管理が必要なものです。

  • 人(Man
    現場の作業員のこと
    個々のスキルや適性を分析し、作業工程の配置を管理する
    作業員の習熟度や勤務状況が製品の品質に関わる
    人員の過不足や教育も含まれる

  • 機械(Machine
    製造に必要な機械設備のこと
    しっかりメンテナンスや点検されているか、交換が必要かなどを管理する
    機械を効果的に活用するためのレイアウトも含まれる

  • 方法(Method
    正しい作業手順の製造を管理する
    品質管理によって提案した内容を工程ごとに標準化し、マニュアルを作成しているかなどを確認する
    生産形態・生産方式・作業手順・ルール・加工条件・検査や測定方法などが該当する
    継続的な見直しにより、管理方法やマニュアルが適性かの確認が必要

  • 材料・製品(Material
    製品の原材料や部品のこと
    不良品がなく品質基準を満たしているかを管理する
    原材料や部品によるトラブルが発生した場合は追跡が必要
    材料不足や過剰在庫が発生しないようにする在庫管理、仕入れ先や材料の調達の管理なども含まれる

4Mは不良品の発生時でも、素早く原因を特定できます。

 

業務を標準化する

品質管理がうまく活用されるかどうかは、すべての部門で作業手順を標準化できるかかが重要です。製造には多くの部門・作業員が関わるため、それぞれが実施する品質管理の手順が異なると、品質を低下させてしまう恐れがあります。

業務を標準化させるためには、5つのステップが必要です。

  1. 現状を把握し業務を洗い出す
    まずは現場全体の状況を把握して、必要な業務と不要な業務に分ける
    業務の洗い出しと同時に問題点や今後課題にするべきものを見つけておく
    チェックリストをもとに行うと効率的

  1. 標準化する業務の優先順位をつける
    1で課題が見つかった場合は、対策を考え、標準化する業務に盛り込む
    洗い出した業務と対策を加えた業務を合わせて優先順位をつける
    基幹となる業務→課題対策した業務の順に標準化するのがおすすめ

  1. 業務を整理する
    優先順位の高い業務から工数・作業手順・必要人数・難易度などを数値化する
    誰が見てもわかりやすいよう表現するのがポイント
    数値化で分かりにくいようであれば具体的な言葉で表現する

  1. マニュアルと業務フローを作成する
    標準化させたい業務を共有できるように、マニュアルと業務フローを作成する
    誰でも確認できるツールで作成する
    変更のたびにしっかり反映させる

  1. 運用と改善を行う
    完成したマニュアルと業務フローの運用方法を決める
    「誰が・いつ・どのように」共有するかを明確にする
    マニュアル更新も同じように決める

一度標準化させたとしても、現状が変われば見直しが必要です。定期的に現状把握する習慣をつけましょう。

 

QC7つ道具を活用する

効率的な品質管理を実施するには、QC7つ道具の活用は欠かせません。QC7つ道具とは品質管理のデータ分析で使用する、7つの手法のことです。7つの手法は、グラフ・ヒストグラム・パレート図・散布図・管理図・特性要因図・チェックシートです。

  • グラフ
    数値の変化や比較を可視化したもの
    使用することで視覚的に全体像が把握できる
    棒グラフ・円グラフ・折れ線グラフ・帯グラフなどがある
    確認したいものに合わせて使い分ける

  • ヒストグラム
    別名分布図
    データの分布を可視化したもの
    縦軸をデータの数値や度数、横軸を階級にすることで、分散状況や中央値がわかる
    問題点を明確にできる

  • パレート図
    不具合件数や不良個数を可視化したもの
    縦棒チャートと折れ線チャートで表現される
    重要な原因を一目で分析できる

  • 散布図
    2つのデータに関連性があるかどうかを分析できるもの
    原因と結果を縦と横で、点を打って表す

  • 管理図
    偶然原因と異常原因のばらつきを判断して品質のばらつきが起こる原因を確認するもの
    中心線(平均値)・上方管理限界線(UCL)・下方管理限界線(LCL)で構成される
    計量値と計数値の2種類あるが、品質管理では不良品や不具合の個数などをカウントできる計数値が使用される

  • 特性要因図
    課題や問題の要因を知れるもの
    魚の骨のように矢印が向いているため「魚の骨図」とも呼ばれる

     
  • チェックシート
    データ記入に役立つもの
    点検や調査の際に用いられる
    事前に確認項目を記載しておくとチェック漏れを防げる

QC7つ道具は大量のデータを分析するのに効果的です。

 

PDCAサイクルを回す

品質管理はPDCAサイクルを意識して実施しましょう。PDCAサイクルとは

  1. 計画(Plan
  2. 実行(Do
  3. 評価(Check
  4. 改善(Action

4工程を1サイクルとして繰り返す手法です。

まずは目標を設定して「計画」を立てます。そして計画を「実行」し、計画通りできたかを「評価」します。評価をもとにうまくいかなかった原因を探り「改善」へ導く、これがPDCAサイクルです。「改善」まで実施すると、また改善策に対して計画を立てて、実行に移します。

 

DXを推進する

DXを推進することも品質管理につながります。DXとは、ICT(情報通信技術)を活用して競争に勝てる業務プロセスへ変革することです。品質管理をICT化することで、原材料から作業工程、担当者など細かい情報もすべてデータで管理できます。

近年は、品質管理にAIを導入しようという動きもあり、DXを推進することで、より品質管理が正確で作業を標準化できるメリットが期待できます。

 

 

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次にこちらでは、多品種少量生産の必要な理由をメリット・デメリットと一緒に解説します。ぜひご覧ください。 

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まとめ

製造業の品質管理とは、製品をつくる工程で一定の品質が保たれているか、不良品はないかをチェックして管理することです。低品質の製品を販売しないために、とても重要な作業です。

しかし、品質管理するにはクリアしなければならない、いくつもの課題があります。どの課題も解決するのは容易ではなく、しっかりとした対策が必要です。

3D Systems」のアプリケーションイノベーショングループは、お客さまと密接に協力して複雑な問題を解決します。価値の向上を短期間で実現し、アディティブマニュファクチャリングを通じた組織の成長と、製造へ向けての規模拡大の両面で競争上の優位を確立できます。ぜひ、ホームページからお気軽にお問い合わせください。