生産方法のひとつとして、多品種少量生産という方法があります。多品種少量生産を導入する企業は増えつつあり、現代のニーズにマッチしやすい生産方法です。また、多品種少量生産には、従来の生産方法とはやはり異なるメリットやデメリットも存在します。
今回は、多品種少量生産の必要性やメリット・デメリットについて紹介します。今回紹介する内容をしっかり把握し、自社に導入するかどうかを判断しましょう。
多品種少量生産とは
その名のとおり、多種類の商品を少量ずつ生産する方法です。従来は、品質の均一化やコスト削減に効果的な大量生産が主流でした。しかし、時代の流れとともに顧客のニーズが多様化し、ひとつの種類でニーズを賄えることが難しくなっていきました。
そこで、多種類の商品を少量ずつ生産することで、顧客の幅広いニーズに対応できるようになります。種類ごとに生産工程が異なり、工数や生産コストが増えるなどのデメリットがありますが、多品種少量生産に取り組む企業は増えてきています。
多品種少量生産が必要な理由
理由としては、3つの要素が関係しています。それは、顧客ニーズの多様化・Industry 4.0・マスカスタマイゼーションです。
顧客ニーズの多様化に関しては、前述したとおり、時代の流れとともに発生しています。少品種を大量に生産することで成り立っていた商売が、徐々に通用しなくなっていきました。そのため、現在では、可能な限り多品種にしたうえで少量ずつ生産することが、より顧客ニーズに寄り添った生産方法となっています。
Industry 4.0とは、和訳すると「第4次産業革命」のことであり、ドイツ政府が2011年に発表した政策のことです。具体的には、ITを取り入れた高い生産性の実現と多くの市場ニーズに応えることを目的として打ち出されたものです。そのため、多品種少量生産には世界規模で求められているという現状があります。
マスカスタマイゼーションとは、大量生産を実現しながら顧客ニーズに応えるといった生産方法です。コストを抑えつつ、顧客ニーズに寄り添った生産ができるといった強みがあります。この方法を取り入れている企業が徐々に広がっているという背景は、多品種少量生産を促す要素ともなっています。
多品種少量生産の具体例
多品種少量生産に取り組んでいる業界は多岐にわたります。今回は6つの事例を紹介します。該当する業界がなかったとしても、取り入れるためのヒントがきっと隠されているでしょう。
工場
マスカスタマイゼーションを活用して生産する方法を、多品種少量生産として取り入れている企業が多くあります。たとえば、PC販売の大手であるデル社では、まず部品ごとの組み合わせをあらかじめ用意し、次に指定に沿ったPCを生産するといった方法を取り入れています。
食品
食品の事例は、生活と密接に関わっているため分かりやすいでしょう。たとえば、チョコレートひとつをとっても、板チョコだけではなく、クッキーや飲料としても商品を提供しているメーカーは多いです。
また、健康志向が高まりつつある昨今では、同じ商品でも「減塩」や「糖質オフ」などと記載した商品を合わせて打ち出している事例も多く見受けられます。
農業
農業で見られるのは、生産のみならず、流通・販売まで担う6次産業化を活用した事例です。株式会社DaisyFreshでは、約70種類の野菜を生産しています。そして、生産だけなく、弁当や加工品の販売、学校給食への提供、直営店舗の運営なども行い、高収益を実現しています。
アパレル
アパレルではファストファッションが代表的な事例です。ファストファッションの代表格であるH&MやZARAでは、短いサイクルで多品種の商品を生産しています。
商品は最新のトレンドを意識して作られるため、低価格でトレンド感のある商品を手に入れることが顧客にとって大きなメリットとなっています。
化粧品
肌質や年齢などで合う化粧品が異なるといった現状から、多品種少量生産を取り入れているメーカーが増えつつあります。実際には、1つの商品を販売するサイクルの短さや新工場の建設、システム開発などが多品種少量生産を意識している事例といえます。
家電
工場や倉庫、コンピューターの活用によって、企業成長へとつなげている事例が代表的です。アイリスオーヤマでは、デパートメントファクトリーと呼んでいる工場でプラスチックや金属など、さまざまな素材を取り扱っており、多品種少量生産を可能にしています。
各工場で生産品目は分けておらず、同じ機械を使っても、異なる商品成形が行える体制です。工場で生産された商品は世界最大規模の物流センターで保管され、入出庫管理はすべてコンピューターで対応しています。
多品種少量生産のメリット
今回はメリットを2つ紹介します。時代の変化やコスト削減など、企業側が常に求められているものに対して効果的な内容となっているため、ぜひご覧ください。
多様化した顧客のニーズに対応できる
現代は、生活スタイルの変化やITの進歩により、顧客のニーズが多様化しています。そのため、企業もなるべく多くのニーズに応えられる商品を提供することが求められるようになりました。
多品種少量生産にすることによって、多くの品種に対応した生産を行えます。ここでポイントとなるのが、個別受注生産ではないということです。
個別受注生産は、顧客から注文を受けたあとに仕様や設計を決めて製造する生産方法です。小ロットの生産となるのは共通点ですが「多くの品種」を取り扱うわけではありません。
多品種少量生産は、ある程度の生産効率も必要です。たとえば、ベースとなる部分は共通仕様とし、部品となる部分をカスタマイズするといった方式での生産にしておくと、効率的な多品種少量生産が行えます。
現代は、生活スタイルの変化やITの進歩により、顧客のニーズが多様化しています。そのため、企業もなるべく多くのニーズに応えられる商品を提供することが求められるようになりました。 多品種少量生産にすることによって、多くの品種に対応した生産を行えます。ここでポイントとなるのが、個別受注生産ではないということです。 個別受注生産は、顧客から注文を受けたあとに仕様や設計を決めて製造する生産方法です。小ロットの生産となるのは共通点ですが「多くの品種」を取り扱うわけではありません。 多品種少量生産は、ある程度の生産効率も必要です。たとえば、ベースとなる部分は共通仕様とし、部品となる部分をカスタマイズするといった方式での生産にしておくと、効率的な多品種少量生産が行えます。
多品種少量生産はその名のとおり、ひとつひとつの商品在庫は少ないため、在庫を抱えるリスクは少品種大量生産よりも抑えられます。在庫が多く発生すると、生産コストを回収できずに廃棄コストがかかり、かえって損失を生む場合もあります。
また、在庫を抱えるリスクの削減のほかに、多品種少量生産は生産量の調節もしやすいです。売上の動向次第で、商品によっては完全受注生産の方がよい場合もあるでしょう。その場合、多品種少量生産から完全受注生産への切り替えもある程度スピード感を持って行えます。
多品種少量生産のデメリット
多品種少量生産には、やはりデメリットも存在します。今回は、デメリットを4つ紹介します。デメリットまで把握したうえで、多品種少量生産を導入するかを検討しましょう。
生産コストが増加する
多品種少量生産には、やはりデメリットも存在します。今回は、デメリットを4つ紹介します。デメリットまで把握したうえで、多品種少量生産を導入するかを検討しましょう。
生産コストが増加する
多品種少量生産は、仕入れる原料や資材の種類が増えるため、生産コストが増加します。とくに、温度や湿度などで質が左右されるようなデリケートなものを扱う場合は、より管理面のコストが増加することを予想しておくことが必要です。
また、新たな設備の導入や工数の増加も同時に発生する場合があります。その場合、設備費や工数増加にともなう人材の確保なども新たに必要になるため、仕入れ面以外のコストも増加する可能性も見越しておいた方がよいでしょう。
生産効率が低下する恐れがある
ひとつの品種を生産する時間が長ければ長いほど、生産効率は上がります。そのため、少品種大量生産は効率のよい生産方法といえますが、多品種少量生産は生産効率が比較的悪い生産方法となります。
効率が悪くなる原因は、生産プロセスや生産ラインです。多品種少量生産は、製品ごとの生産プロセスの切り替え数が多いです。切り替え数が多いとその分作業も複雑化してしまい、効率が低下します。
また、切り替えごとに生産ラインを停めなければならない場合もあります。生産ラインが停まってしまうと、その間商品自体が生産できないため、より効率の低下を招くでしょう。
品質の確保が難しくなる
同じ製品を繰り返し生産していると、改善を重ねて耐久性を上げたり、繰り返し作業することによる作業員の技術の向上が期待できます。また、同じ製品を長く取り扱っていくと、改善点も見えやすくなり、品質の向上も図りやすいです。
しかし、多品種少量生産であれば品種が多いため、なかなか同じ作業を長時間繰り返すことも難しくなり、品質確保も困難になります。
多能工化が必要になる
多品種少量生産では多くの品種を生産するため、ひとつの技術力を向上させるよりも、多能工化が求められます。多能工化を実現させるには、実践の繰り返しはもちろんのこと、付随して必要になるのは品種ごとに必要な知識やノウハウの習得です。そのため、少品種大量生産よりも作業員の育成に時間がかかり、人件費もやはり多く発生することになります。
多品種少量生産の課題を解決する方法
多品種少量生産が抱える課題には、解決策もいくつか存在します。今回は、解決策を4つ紹介します。多品種少量生産の導入前に起こりそうな課題点を抽出し、解決できる見込みがあるかも考えておきましょう。
受注ごとに最適な生産方法を選ぶ
受注頻度やロットの大きさによって、適した生産方法が異なります。そのため、ロットの大きさと受注頻度を組み合わせた4つのパターンごとに最適だと思える生産方法を決めておきましょう。
パターンは「多頻度・大ロット」「少頻度・大ロット」「多頻度・大ロット」「少頻度・小ロット」の4つです。多頻度と少頻度の定義は、月ごとの受注回数をボーダーラインにして決めるとよいでしょう。ロットの大きさは、金額で判断することをおすすめします。
4パターンに分けたあとは、適した生産方法を決めていきましょう。決める際は、頻度をもとに生産方法を判断します。
まず「多頻度・大ロット」「多頻度・小ロット」のものであれば、在庫を持っておくのがおすすめです。なぜなら、頻度が多いと段取り替えの回数が増え、生産効率が低下するためです。一方「少頻度・大ロット」「少頻度・小ロット」のものであれば、段取り替えの回数が少ないため、受注生産の方がよいでしょう。
段取り替えの回数を減らす
品種に合わせて、設備の設定変更や道具の取り替えなどを行う「段取り替え」を改善することで、作業の効率がより上がります。具体的には、段取り替えの回数の削減や所要時間の短縮が行えるような工夫を行いましょう。
そのためには、生産ラインの停止が不要な「外段取り」と生産ラインの停止が必要な「内段取り」の2種類に分けて、改善していきましょう。改善策としては、なるべく外段取りができるような工夫をするのが効果的です。ほかにも、作業手順や工場のレイアウトの見直しなども合わせて行い、作業の効率化を図りましょう。
部品表のルールを見直す
ひとつの製品を作るために必要な部品の種類や量などが記載されている部品表(bill of material:BOM)を見直すことも、課題解決には効果的です。部品表が必要になるシチュエーションとしては、資材や原料の調達部門・生産部門・設計部門など、あらゆる場面で活躍します。
部門ごとに必要な情報が異なるため、部品表を改善するには各部門が求める情報を網羅することが重要です。各部門はもちろん、必要であれば異なる部門の作業者ともコミュニケーションをとりながら、最適な部門表作りを目指しましょう。
生産管理システムを導入する
生産管理システムとは、生産に関するあらゆる情報を一括管理できるシステムのことです。具体的には、原価や利益に関する管理・生産工程の管理・調達管理・在庫管理など、さまざまです。
システムを導入することによって、ひとつの製品の原価や利益がいくらなのか、生産するためにどのくらいの日数がかかっているのか、在庫はいくつあるのかなど、あらゆる情報がすぐに可視化できます。可視化できた情報は、原価面の見直しや作業効率の改善などに大いに役に立ちます。
ただし、生産管理システムといってもいろいろな商品があるため、多品種少量生産に合った商品を選ぶことが重要です。システムによっては大量生産向けの商品もあるため、注意しましょう。自社にあったシステムを選ぶために、欲しい機能や解決したい課題がどんな内容であるかを事前に分析しておきましょう。
3D Systems 連絡窓口
次にこちらでは、工程管理について、主な目的や重要性などの基礎知識を解説しますのでぜひご覧ください。
まとめ
今回は、多品種少量生産について紹介しました。多品種少量生産には、顧客ニーズの多様化や在庫を抱えるリスクの軽減などに関してメリットがあります。しかし、生産コストの増加や生産効率の低下などのデメリットも存在します。
多品種少量生産の導入を検討する際は、3D SYSTEMSへ合わせて相談してみるのがおすすめです。3D SYSTEMSでは、製造業に対応した3Dプリンターを提供しています。理想のデザインを具現化しやすく、コスト削減や効率向上に対して非常に効果的です。
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