Figure 4® テクノロジーによる高速パーツ交換
研究開発や技術移転の分野で世界的なリーダーとして認められている University of Dayton Research Institute (UDRI) は、America Makes MAMLS の 3 つの認定プロジェクトの 1 つを、「低重要度パーツファミリー向けの新しいプロセステクノロジー」というテーマで実施しています。具体的に UDRI が研究しているのは、「デジタル光処理による高速パーツ交換」です。これは、3D Systems の Figure テクノロジーによって可能となるアディティブマニュファクチャリングプロセスです。この研究の対象となる低重要度パーツには、電気コネクター、ノブ、エラストマーグロメット、スペーサーなどが含まれます。これらは航空機に搭載されてそれぞれの機能的役割を果たします。
さらに、UDRI と 3D Systems は、MAMLS プログラムのフェーズ 1 と 2 にも参加しています。これも同様に維持をテーマとしていますが、中心となるトピックが異なります。各プロジェクトは互いに独立していますが、前の各フェーズにおいては、フェーズ 3 が遅滞なく開始されるための基礎が築かれ、UDRI と 3D Systems は、ALC がどのように動作し、どのようなニーズがあるかを実用的観点から理解することができました。また、フェーズ 1 と 2 は、様々なパーツのアディティブマニュファクチャリングに関するビジネスケースを特定し、容易に供給できるものとできないものの区別や、アディティブマニュファクチャリングが適している分野について理解を深めるためにも役立ちました。
従来の航空機の場合、アディティブマニュファクチャリングのビジネスケースは、製造が終了していたり、作成コストが高かったり、必要数量が少なかったり、元のツーリングが利用できなかったり、ドキュメントに不備があったり、それ以外の入手困難な理由があったりするために、生産ができないパーツに当てはまります。Figure 4 のような新しいテクノロジーによって得られるパーツ交換のスピードは、米国空軍のような組織が戦略的な維持イニシアティブを進める上で利点となりえます。この研究プロジェクトの今後の 2 年間で、UDRI と協力企業は、Figure 4 が航空機の維持作業全体にどのような役割を果たせるかを明らかにする予定です。
スピードの必要性
3D System の Figure 4 は、非接触膜とプロジェクターベースのイメージングを組み合わせて使用するモジュラー製造プロセスです。ツールパスベースの AM テクノロジーと異なり、Figure 4 ではパーツ断面全体を 1 回の投影で製造できるので、高い分解能、滑らかな表面、反応性の製造材料の化学的性質、高いプリント速度を維持できます。また、Figure 4 は、すべての Figure 4 材料に対してシックスシグマの再現性 (Cpk > 2) を実現するので、現時点で最も製造に適した 3D プリントテクノロジーと言えます。
幾何学的正確さに加えて、プリント速度と材料の適合性が鍵となります。恒久的なカスタム修理作業を 1 日で実行できれば、航空機の運用可能性を高め、同じ日の運航に使用することも可能なので、非常に魅力的です。ただし、その機能の利用に先立って、UDRI は、USAF や国防総省のその他の機関などによる Figure 4 テクノロジーの正式採用に道を開くため、潜在的問題を体系的に特定して解決しようとしています。
あらゆる分野のエキスパート
UDRI は、高度な材料、エンジニアリング、航空宇宙テクノロジー、構造物理といった分野を得意としており、外部のエキスパートと協力することで、このプロジェクトをできる限り包括的で効果的なものにしようとしています。UDRI は、3D Systems と協力して、材料の開発、特性評価、後処理プロトコルを作成することで、材料の性質を航空分野の認定材料の要件と整合させてドキュメント化することを目指しています。これらの仕様は、機械的特性や環境特性から、難燃性などの安全基準にまで及びます。3D Systems の役割は、このプロジェクトの調査対象のアプリケーションに適した材料を供給することで、UDRI を支援することです。そのためには、現在市販されているフォトポリマーの中から適合するものを探すか、新しい材料を開発することになります。
主要な協力企業の中には Lockheed Martin と Northrop Grumman も含まれており、UDRI のテストパーツに対して厳格な検査を実施して成果を検証します。UDRI は、すべての軍事仕様、ALC、OEM パートナー適格性を使用して、業界標準に照らしてパーツをテストします。UDRI のアディティブマニュファクチュアリングテクノロジー開発グループリーダーである Timothy Osborn 博士によると、この協力企業の集合は、研究成果を他のプログラムよりも迅速に実用化するために最適なテストマトリックスを構成します。
デジタル光処理への移行の科学的アプローチ
プログラムの最初の作業は、テストするパーツを特定し、それらのパーツに必要な材料仕様を記述することです。UDRI は、Creaform HandyScan スキャナーとリバースエンジニアリングソフトウェアを使用し、3D scan-to-CAD ワークフローに基づいてパーツをデジタイズし、プリント用のファイルを準備します。プリントが終わると、材料テストが開始されます。Osborn 博士によれば、この研究からは 6 か月前後でよいデータが得られる見込みで、プロジェクトの完了時には空軍向けの最終報告書と勧告が作成される予定です。
現在のところ、これらのアプリケーションに対する Figure 4 テクノロジーの適用にはいくつかの不明点がありますが、このテクノロジーの速度と幾何公差は非常に有望です。UDRI とその協力企業は、このプログラムを通じて、高速パーツ交換を実現するために必要な知識を得ることを目指しています。
公表承認済み。ケース番号: 88ABW-2018-5721
米国空軍 (USAF) の維持ミッションは、多数の古い航空機、システム、機器の老化が進むにつれて、困難さを増しています。この負担に対処するには、迅速で信頼性が高く、恒久的なメンテナンスソリューションが必要です。業界のフロントランナーや研究者は、従来の維持ソリューションの範囲を超えて、新興技術の可能性に注目しています。3D Systems のアディティブマニュファクチュアリングを使用した高速パーツ交換によるオンデマンド製造を通じた在庫管理は、有望なソリューションとして現在真剣に検討されています。
America Makes は、アディティブマニュファクチュアリング (AM) および 3D プリンティング テクノロジーに関する研究、発見、創造、イノベーションの分野で米国をリードする共同パートナーであり、必要に応じて移行可能な新しい維持方式を特定して評価するためのイニシアティブを主導しています。「Maturation of Advanced Manufacturing for Low-Cost Sustainment」 (低コストの維持のための高度製造の成熟化: MAMLS) プログラムの下で、America Makes は、現在プロジェクトコールのフェーズ 3 を実施中です。この段階の内容は、工場の効率改善のための応用研究開発プログラムと、USAF の戦略的即応性を確保するための Air Logistics Complex (ALC) です。