「これまでに排除したすべての治具関係のコスト、作業の必要性がなくなった 2 次的な再加工のすべて、排除した後処理手順のすべて、これまでに作成したすべてのパーツ、そして SLS システムでプロトタイプおよびパーツを作成することによって削減した作業工数を集計するとしたら、システムに支払った金額分は十分に節約できたと即座にいえます。それどころか、2 台目のシステム分に相当するかもしれません」と、Jerry Clark 氏 (Boeing 社メサ工場 Integration and Rapid Development Department、Air Vehicle Configuration Design マネージャー) は述べています。

5 か月の期間において、Clark 氏の部門では 400 点以上のパーツを SLS システムで作成しました。ほとんどは、DuraForm ポリアミド (PA) 材料で作られました。DuraForm は、Boeing 社メサ工場で必要とされるプロトタイプ作成および直接製造の多くを充足しています。同社は、AH-64D Apache Longbow ヘリコプターをはじめとする航空機製品の設計、テスト、生産を手掛けます。

SLS システムが「高優先度」になった理由

「当社は、サイクルタイムの短縮、ツール作成の迅速化、場合によっては治工具の必要性やその他の後処理手順全体の排除を実現できる方法を模索していました。さらに、SLS システムにより当社の研究を促進できる分野を見極めてきました」と、Clark 氏は述べています。「これが当社システムの購入を促進した要因です。当社では、サイクルタイムを大幅に短縮する機会になると考えていました」。Clark 氏は続けます。「当社が SLS マシンを選択した理由は、その柔軟性、使用可能な材料の多様性、研究での活用の可能性、および金属利用によって高まり続ける可能性によるものです」。

Boeing 社がメサ工場の SLS システムで作成する DuraForm パーツの多くは、プロトタイプ航空機、車両、モックアップに直接使用されます。Clark 氏は述べます。「DuraForm は、フェアリングおよびその他の荷重を支持しないコンポーネントやパーツ等、2 次構造用の機能パーツを製作する必要がある領域で良好に機能しています」。また、Boeing 社では DuraForm を使用して荷重を支持するコンポーネントおよびパーツを作成する検討もしています。

これらのパーツには、通常、さまざまな試験が実施されます。たとえば、引張強度、耐熱性、疲労、材料整合性、水分およびさまざまな菌類に対する耐性を測定する試験があります。実施される試験の組み合わせは、パーツの使用方法と使用場所、パーツの使用条件と想定される危険状態、人間の接触の有無、その他さまざまな要素によって異なります。

ヒューマンエラーの可能性を最小化

ボーイング社が DuraForm プロトタイプパーツを同社の SLS システムで直接製作できるようになり、これまでは長時間を要し、しばしば単調な作業であったパーツ図面の生成、プロトタイプツールの作成、プロトタイプパーツの製造、後加工手順の工程が最小化または排除されました。その結果、ボーイング社は時間の節約、コストの削減、開発のさまざまな段階で発生しがちな多くの種類のヒューマンエラーが繰り返えされる可能性の低減を実現しました。

「プロトタイプの治工具とパーツの製作依頼をして、それらが適合しないのか、それとも正しく機能するのかを確認するだけのプロセスを通過するのはむしろ苦痛かもしれません。一方、当社の SLS システムでは、コンピュータデータからプロトタイプパーツ、航空機への実装まで、直接移行するのが普通です。これも別の形のペーパーレスシステムです。1 枚の写真が数千語の言葉に相当するとしたら、1 つの 3-D 物理モックアップは 10,000 語の言葉に相当します」と、Clark 氏は言います。

デジタルマニュファクチャリングによる少量生産

ボーイング社のメサ工場においても、限定生産パーツの注文数量に対応するために DuraForm パーツの使用を模索しています。このソリューションはボーイング社において大きな可能性を持ちます。

Clark 氏は説明します。「我々の主要な顧客は米国陸軍ですが、海外の国防軍にも販売しています。海外の顧客は米国陸軍が使用している航空機や車両と同じものを要望されることがありますが、カスタム化や変更に関する特別要件や要求をお持ちの場合もあります」。

たとえば、顧客から独自のアビオニクス機器を車両に取り付けるよう要望されることがあります。「そのため、異なる冷却システム構成とそれに関連するダクト配置が必要になることがあります」と、Clark 氏は言います。

「当社顧客が航空機を年間 40 ~ 50 機購入し、航空機 1 機あたりに Boeing が作成する必要のある冷却ダクトがわずか 3 ~ 4 個の場合、高価な治工具の作成に時間や費用を費やし、多数の必要な手順を実行するのは理にかなっていません」と、Clark 氏は言います。「このように、顧客が必要とする DuraForm パーツを SLS システムで製作直接できるようになりました。後日、さらに多くのパーツの需要が大幅に増えた場合には、SLS システムで治工具そのものを製作することにより生産用治工具で生産を進めることができます」。

Clark 氏は続けます。「ここで鍵となるのは、治具関連に多くの時間とコストをかけて工程を増やさずに、基本形を迅速かつ急速にカスタマイズして、お客様のニーズごとのパーツを生産する能力です」。

Clark 氏によると、Boeing 社は DuraForm パーツおよびプロトタイプを膨大かつ増加を続けている用途に使用しています。たとえば、サプライヤーに提示する可視サンプルの作成、見積りの提供、複雑なアセンブリを解体しない限り製作不可能な既存パーツの見本作成、上層部による内部設計レビューおよびテクニカルレビューセッションの実施、性能レビュー (顧客から提供されれたサンプルパーツ使用)、テスト用のスケールモデルの製作等が挙げれられます。

「私たちが実感しているもう 1 つの利点は、サプレイヤーおよびチームメンバーとのコミュニケーション、さらには同僚間でのコミュニケーションが良くなることです」。

「これは、技術スタッフメンバーがパーツについて技術スタッフ以外のメンバーに説明する場合に、特に説得力を持ちます」と、Clark 氏は言います。「メンバーどうしが互いに理解し、対話できるようになることがプロジェクトのより円滑な進展に貢献することは間違いありません」。

「おそらく私たちの最大の課題の 1 つは、SLS システムが単に巧みなモデルを作るためだけのマシンではないことを、当社の従業員に理解させることでしょう」と、Clark 氏は言います。「それができるのは確かですが、ただ現時点では実際のパーツ、機能パーツ、迅速なプロトタイピング、迅速なツール開発、迅速な製造のためにシステムを使用しています」。

Clark 氏は続けます。「社内のもっと多くの人にこれを知ってもらい、可能性のある用途および用法を理解および認識してもらいたいと考えています」。