設計および品質保証の革新に関しては、企業は2つのタイプに分類されがちである。一方は 新しい技術の採用を最後の瞬間まで待っていて時代に置き去りにされる企業。そしてもう一方は、常に最前線に立って継続的な向上に取り組む企業だ。

自動車やオートバイ産業における日本の金属加工メーカーである株式会社浅野は、明らかに後者のタイプであり、3D スキャン技術を採用して設計と品質保証プロセスに大きな影響を与えている。

Geomagic Design X ソフトウェアを使ったリバースエンジニアリングによって設計作業に、Geomagic Control X ソフトウェアによって品質保証における速度と精度に変革を起こしている。これらはどちらも 3D Systems によって開発されているソフトウェアである。

主要なビジネス

浅野では試作板金部品や量産用プレス金型、樹脂射出成型金型等の製造開発を展開している。多彩かつ高度な技術基盤と共に、CFRTP(熱可塑性炭素繊維強化プラスチック)を使った自動車の軽量化など、先端技術への積極的な取り組みで知られている企業だ。

CAD機械加工統括グループリーダーである阿部氏はおよそ10年前に 3D スキャナと Geomagic Design X による試用を開始した。阿部氏はリバースエンジニアリングが浅野のビジネスの一つの主力になると考えている。これまですでに 200 点余りを 3D スキャニングと Geomagic Design X により、リバースモデリングしたと言う。

Geomagic Design X は 3D スキャンデータから高品質なフィーチャベースCADモデルを作成するよう設計されたソフトウェアだ。あらゆる大きさの対象形状を再現するために必要なすべてを提供し、ソリッドモデルの自動抽出やガイドの抽出、有機 3D 形状のスキャンデータにフィットするサーフェースの抽出、メッシュ編集、点群処理などを含み、製造に使えるデータを作成する。

“リバースエンジニアリングソフトウェアはいろいろありますが、すべての機能のバランスが取れ、膨大な点群も軽々扱える Geomagic Design X がベストでしょう” と阿部氏は語る。 “フィーチャベースのソリッドモデリングだけでなく、自動サーフェース作成などいろいろなモデリング手法を持っている。試したいことに積極的に挑戦できる理想的なツールです。”

Geomagic Design X を使った車のエクステリア 3D スキャン

安定性向上のためのパーツ設計

最近ホンダ車エンジンチューナーやパーツのメーカーである株式会社スプーンの依頼による新製品開発が、浅野の 3D スキャニング技術の高さを例示している。

このプロジェクトでは Honda S660 フロントの足回りのための新しいプレートの設計に関与している。この部分は、ハードブレーキングやロール時に捩じれが生じる課題があった。プレートは車の複雑なベースアセンブリのパーツとしてもともと設計されているため、ゼロからの設計には膨大な時間が必要とされる。

そこで製図ボードに戻る代わりに浅野では S660 の車体下面をスキャンする方法を取り入れた。スキャンしたデータは Geomagic Design X を使ってデータ処理とリバースモデリングを行い、オリジナルプレート位置にそのまま取り付けられる精度のプレート作成を可能にした。

“再設計されたプレートは、加工せずに簡単に取り付けができ、しかもアンダーカバーもそのまま装着できる精度を持っていた。” と阿部氏は言う。

阿部氏によれば、再設計したプレートはサブフレームのようにサスペンションとボディをワンボックス化することで、安定した操縦性を実現できたと言う。

 

浅野による Geomagic Design X の初回スキャン

正確に早く

点群キャプチャと処理に留まりません。Geomagic Control X は、最初の試作で正確な金型を作成して試作数を減らすことに注力する浅野の品質保証部門の中心的なツールに進化しています。

“従来の検査に代わる、より早くより精度の高い新しい検査手法も積極的に進めています。”と群馬工場で品質保証課の課長を務める今井氏は語る。

Geomagic Control X は 3D スキャナから部品を正確に測定し、初回品検査やその他の計測アプリケーションのためのデジタルリファレンスデータと正確に比較を可能にするソフトウェアだ。ソフトウェアは即座に測定、公差、偏差の 3D レポートを作成することができる。

浅野では 3D スキャナと Geomagic Control X を、よりスピーディで正確な試作品検査の実現に役立てている。

“試作作りにあたっては全体の形状やサーフェースを把握することが重要です”。 そう話すのは浅野の品質保証課で検査を担当する松本氏だ。 “Geomagic Control X を使い始める前は、試作をプレスしてレーザー測定した結果がNGだった場合、形状の問題かレーザーの問題かの判別が困難でした。これにより膨大な時間を費やしていました。”

Geomagic Design X でシャシーパーツをモデリング

2~3倍スピードアップ

従来はコストや時間の問題から検具を作れず、三次元測定器による製品素性の検査は量産品に限られていたという。

“量産品以外は三次元測定器による穴位置の確認やサーフェースも任意のポイントを使って測定するしかありませんでした。” と松本氏は語る。“全体形状の把握は困難であり 結果、製品の素性を明らかにすることに膨大な時間と労力が使われていました。”

それが、 3D スキャナと Geomagic Control X を使うことによって素早く形状を把握し、傾向を掴むことができるようになったと松本氏は言う。

「私たちの検査では以前の2倍から3倍までスピードアップし、大きく効率化を図ることができました。」

リバースエンジニアリングや 3D 計測などの新技術の採用は、同社のDNAに組み込まれており、浅野では積極的に取り組んでいる。

「私たちはニーズを先取りして、何事にもまず挑戦します。」こう語るのは経営推進室の岸室長。「このスタンスが当社の特徴の1つなのです。」

3D スキャンを使って 3D CAD データから製造した部品と比較